第一節の2 大映テレビとは何か
大映テレビ株式会社というのは、平成『ガメラ』などを作っている大映とは別の会社だ。もともとは一つの大映株式会社だったが、七一年に破産して、その中のテレビ室が独立した会社になったのである。平成『ガメラ』の大映は、映画会社のほうを徳間グループが買い取って継続し、現在はKADOKAWAが買った会社だ。現在は角川大映スタジオと改名してKADOKAWAから独立し、話題のドラマ『M 愛すべき人がいて』(後述予定)などを作っている。
それはさておき、旧大映のカラーをより引き継いだのは、その大映テレビのほうだと言われる。例えば旧大映のヒット作に、出生の秘密を中心とした「母もの」*というシリーズがあるが、これはその後、『乳姉妹』や『少女に何が起こったか』などに反映されている。また一方では、旧大映を支えた監督の一人に増村保造*という人がいる。この人が脚本を校いて大当たりしたのが、八三年の『スチュワーデス物語』なのである。今でも伝説的に語られる、ぶっ飛んだ会話や描写は、増村保造の、ひいては旧大映のカラーを前面に押し出したものだった。
この枠(火曜午後八時)は、『スチュワーデス物語』の前に、怪物的な人気を誇る東宝の『積木くずし』があった。非行少女と親との葛藤を描いた、デフォルメの強い作品である。巻頭での最終回視聴率は四五・三パーセント。未だにこれを抜いたドラマはない。
その『積木くずし』の後を引き継いだのが、大映テレビの『高校聖夫婦』であり、これは、いとうまい子*(当時・伊藤麻衣子。これがドラマ初主演)と鶴見辰吾との純愛ものだが、伊藤かずえ(前章)、比企理恵*といった、その後の大映テレビ作品を支える役者が多く出ていて、この路線の先駆けとなった。その後に、『スチュワーデス物語』を経て現われたのが、『不良少女とよばれて』なのである。
それまでの大映テレビが、山口百恵の『赤い』シリーズや、『夜明けの刑事』などで人気を博していたところに、突如現われた『スチュワーデス物語』は、その非日常性から大人気にもなったのだが、同時にこれはふざけているんじゃないか、という視聴者と、まじめに感動できるという人とが、新聞の投書欄で争ったりもした。しかし、かなりの人は、笑いながら楽しんでいた――というのは、かつて竹内義和氏が『大映テレビの研究』で明確にしたことである。
もう少し詳しく言うならば、その特徴は、極端な状況を作り、全ての人間が内心を本音でぶつけ合う、火を噴くような対決にあると言える。そのぶっ飛び方と、実話路線を継承して、更にドラマチックな作品として生まれたのが、『不良少女とよばれて』だった。
ちなみに大映テレビの作品は、いま見ると非常に時代がかっているが、放映された当時でも充分に、現代とは思えないほど時代がかっていた。そこがまた、人気でもあったのだ。
*母もの――旧大映のヒットシリーズ。例えば、産みの母、育ての母、義理の母の間でヒロインが懊悩する。
*増村保造――こんな作品を書いているのにもかかわらず、原田美枝子の『大地の子守唄』(前章)、『曾根崎心中』など、芸術的映画も撮っている。
*いとうまい子――個人事務所で「co.jp」のドメインを持った最初の女優。その後もiPhonなどを使いこなし、日々勉強を怠らない。
*比企理恵――『比企理恵の神社でヒーリング』(〇一、一〇)という本を出した、パワースポットブームの先駆けのような人。もともとはアイドル歌手。
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