第275話【ネタバレあり】DMNと間隙網の違い【解説編】

 ご覧いただきありがとうございます。

 以下、いささかのネタバレを含みます。

 ネタバレの苦手な方は、是非、第001話から第100話までの本編をお楽しみの上、再度お越しください。

 なお、第十二章~第十九章、第110話~第199話は欠番で、最初から存在しません。





――ここから――



 第204話で「超感覚と間隙網」について語りました。

 ざっと振り返ると、

 

 顕現者は通常人の脳内ニューロンネットワークとは異なる、もう一つのネットワークを持っている。

 通常のニューロンネットワークの間隙を縫うようにして、ちょうど知恵の輪が複雑に絡み合いながら、それぞれ独立したリングを成立させているように構成されている。

 顕現者は間隙網が十分発達し、通常のニューロンネットワークと部分部分で接合し、十分有機的な意味で活動可能な状態を維持している。

 その分、勘の鋭いところと、迷いの大きいところを持っている。

 といった内容です。

 

 はてさてこの設定自体は本編では掠るほども出てきておらず、

 それでも十三年前に徹攻兵の設定を考えていた時には既に、装甲服には世代間格差を付けるという設定とともに、顕現者の超感覚を説明づける設定の重要な要素として存在してました。

 

 ちなみに大脳生理学に近い分野の研究者である遊君のモデルからは鼻で笑われました。

 

 

 

 そんな中、最近、デフォルト・モード・ネットワーク(DMN)という言葉を知りました。

 

 何でも、

 意識を集中させていない、リラックスしている状態で活動する、いわばアイドリングモードみたいな存在で、

 意識下で捉えられた各種情報の整理をする役割があり、

 新たな着想が得られたりするものの、

 実は意識的に行動しているときよりエネルギー消費が激しく、

 DMNを続け過ぎることで返って疲れ、あるいは病む場合もある。

 との触れ込みでした。

 

 早速webを渡り歩いてみると、ビジネス系の自己啓発記事ではそこそこ取り上げられているものの、wikiでは「脳の大規模ネットワーク」という記事の一項目に過ぎず、専門のページもまだ存在していない扱いでした。

 

 コーヒーブレイクの話題としては良さそうですが、「ソレを意識して過ごす」というのはゴトゥベンを信じ込んでしまうようなあやうさがあるなあ、と感じています。

 

 さておき、脳の細かな部位の間で、離れた部位同士が連携して活発化するモードが十もあるというのは一つの勉強になりました。

  ・リラックスしている時に活動して

  ・エネルギーを大量消費し

  ・情報整理の合間に妄想(発想)をはびこらせて

  ・ついには本体をダウンさせてしまう

 なんて、鬱の原因そのものなんじゃないのと思ったりもしますが、DMNと非DMNを使い分けることで、新たなビジネスの着想に活かすのが、意識高い系の生き方のようです。

 

 

 

 この、「脳の大規模ネットワーク」と間隙網とは全く別物と考えています。

 あくまで間隙網は、「表のニューロン回路の間隙を縫って構成された、もう一人分の脳に相当する脳神経ネットワーク」です。

 ※いや、実際の脳にそんな余裕の空間なんて無いかも知れないことは認識してるつもりではありますよ。

 ※でも、構造体の神経膠細胞が一部席を譲ってくれて間隙網が存在できるようになるとか浪漫じゃないですか?

 

 もし、顕現者の脳を標本化する機会があって、間隙網を構成する神経細胞群だけを残すことができ、表のニューロンネットワークを構成しているニューロン細胞だけを洗い落とすことができたら、すこし、中身のすかすかな、もう一個の脳みその形が浮かび上がるイメージです。

 

 そもそも、星辰に選ばれた生まれながらの顕現者でも、着甲時強化現象の顕現する前の段階では、間隙網は構成と維持のためにエネルギーをわずかに使うのみで、たまに表のニューロンネットワークから迷い込んできた信号に「こういう可能性もあるんじゃない」と示唆するだけで、半醒半睡の状態です。

 

 その間隙網が急激に動き出すことがあります。

 たとえばその切っ掛けの一つが先達の顕現者による示威行動を知覚することです。

 あり得ない現実が目の前で実現されていることを知覚することで、間隙網自身が自分の存在を認め始めます。

 間隙網と表のニューロンネットワークの接点が増えれば増えるほど、着甲時強化現象の出力は上がっていき、一定段階を超えると、次の世代の装甲服に移行することになります。

 この、二つのネットワークの接点の増加の切っ掛けは、心理的な要素も大きく、それぞれの人がそれぞれのタイミングで、一段、また一段と覚醒していくことになります。

 

 なので、高世代型装甲服に対応した顕現者は高齢化しがちなのです。

 

 そんななか青年期から第六世代型装甲服に対応している二小の面々は、「顕現者の次の世代」の一歩手前の新世代だといえます。

 

 ……「顕現者の次の世代」については、まだ、伏せさせていただきますね、今書いている「王立女子士官学校」の次の作品に手を伸ばせられたら、その時、披露しようと思っていることだったりしますので。

 

 また、示威行動を示されなくとも本人の自覚のないまま、表のニューロンネットワークと間隙網の接続がじわじわ進んでしまう人がいます。

 素の発言や選択が浮世離れしていて「そういう扱い」をされることにも飽いてしまい、世間とのつながりに何らかの形で破綻を来してしまうような傾向があります。

 

 「アデル・ヴォルフ」だとスヴェンや輝巳、「アデル・ヴァイス」ではファゾツリーエ・ヴツレムサーがそちらの系統です。

 

 

 …………ふう、ただのネタばらし編の小話のはずがくどくなってしまいましたね。

 

 その、冬期鬱の傾向を元から持っていて、寒くなるにつれて調子を崩して来てるのに、無理して書いたからですね。

 

 間隙網について、少しでもビジネス・オカルトと違うイメージを抱いて下さったら有りがたいです。

 …………うーん、すらっとかけないなあ。

 伝わるかなあ。

 

 近況ノートの方に、昔、手慰みに書いた概念図も付けてみますね。

 

 もし、お気に止まりましたら100話までの本編をご笑覧ください

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