第242話【挿話】ハイローミックスの過ち【外伝】

 ご覧いただきありがとうございます。

 以下、いささかのネタバレを含みます。

 ネタバレの苦手な方は、是非、第001話から第100話までの本編をお楽しみの上、再度お越しください。

 なお、第十二章~第十九章、第110話~第199話は欠番で、最初から存在しません。





――ここから――



 このネタバレ編を別の場所で公開したとき、この番外編第四十二編で第106話、107話で発表した「ハイローミックスの過ち」を掲載しました。

 すでに「ハイローミックスの過ち」は公表済みなので、その裏話を少し語りたいと思います。


 明理は防衛大学校出の士官なので、レポートなどの資料作成も主任務の一つとなります。

 我が国はマスコミの軍事アレルギーもあって防衛実務についての教育が決定的に不足していますが、防衛省も含めた軍隊は巨大な官僚機構であります。

 それは大東亜戦争の頃から変わらず、南方のフィリピンやインドネシアの島々で、膨大な書類処理に終われていた下士官がいた事実があります。

 蒸し暑いバナナの葉でできた小屋の中で書類作成に終われていた士官がいたのです。

 

 明理もそれは例外ではなく、戦後少ない直接的な戦訓を持つ士官として報告書をまとめる機会があると考え、その要旨をまとめる形でかいたのがこの掌編でした。

 

 作者自身、大隊を編成する時には小隊内でのハイ・ロー・ミックスを考えたのですが、実際の戦場で動かしてみてやりづらさを感じ、このレポートをまとめるに至った経緯があります。

 遠方支援小隊と、中距離射撃小隊と、近距離足止め小隊とに分ける考えに至ったのです。

 これが、自然と機能したのが、比較的小規模だった南方戦線でした。

 

 それと、孫子、韓非子、クラウゼビッツに当たっているのですが、どう勝つかについて述べる用兵家はいても、どう負けるかについて述べる用兵家はあまりにも少なすぎます。

 戦闘を一時撤退してでも維持せざるを得ない場合は、隘路などの要諦に精強な部隊を残し、その損耗の犠牲の下、主力となる本体の数を残し、しかる後に本体の体勢を立て直して反撃に出る必用がありますが、そのことについてはほとんど全くと言っていいほど触れられていません。

 

 このことは、用兵論として半冊の書籍にしてよいほど詳細に述べられるべきで、これについて、色川小隊長の短いけれども冷酷な判断が正しく、明理の指揮が当を得たものであることを残したくこれをまとめた経緯があります。

 

 負け方。

 

 これこそ大東亜戦争でこの国が学んだ最大の戦訓のはずです。

 じっさい、戦闘に負けたとはいえ、国は分断されず、国語は残り、政府は維持されました。

 この事実こそ、世界に示す戦訓です。

 

 負けた、どうして勝てなかったのか、については色々とかかれていますが。

 負け方、どうやって負けたあとの処理を淡々と進めるかについてはまとめた書籍がありません。

 いや、実際には有るのかもしれませんが、千部、二千部の小部数で終わってしまっているものと思われます。

 

 負けたら全部終わりじゃないんです。

 一度負けても続きを戦ってそして勝つんです。

 敗戦しても、その後の極東軍事裁判も含めて、勝ったからこそ、いま、こうして日本語で私達はコミュニケーションを取れているのです。

 これを一番知っている国だからこそ残せるレポートがあり、いずれ書籍になると信じています。

 

 その思いを託したくて、この掌編をまとめました。

 

 勝ちましょう、私達は。

 勝って日本語を守りましょう。

 

 私達は、普段の生活をしているだけで勝利者なんです。


 もし、お気に止まりましたら100話までの本編をご笑覧ください。

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