第214話【ネタバレあり】作者と鬱病【解説編】
ご覧いただきありがとうございます。
以下、いささかのネタバレを含みます。
ネタバレの苦手な方は、是非、第001話から第100話までの本編をお楽しみの上、再度お越しください。
なお、第十二章~第十九章、第110話~第199話は欠番で、最初から存在しません。
――ここから――
結論からいうと四年前に脳腫瘍を摘出しました。
切っ掛けは
夜、一日の疲れをネット記事で紛らわしながらまどろんでいこうと横になり、片目はマクラでつぶってしまい、空いている片目でスマホを見ます。
すると、右目で今みている視界の文字の次の文字が見えないんです。
文章が続かないので困ります。
これが左目で見ると、一つ前の文字が見えなくて、一つ後の文字はきちんと読める。
両目とも、視界の耳側の文字が見えない。その部分が暗くなるでもなくとにかくなくなる。
四十歳を超えていた作者は緑内障や白内障など、高齢化に伴う視力疾患を疑ったのです。
医者に行くのはめんどくさいなーと思いながらも、近所に、ゆるーい眼科さんと、設備の整った眼科さんが居て、何となく設備の整った眼科さんに行きました。
すると、あれも調べろコレも調べろといろんな検査が開始されました。
最後には眠くなってくる始末だったのですがなんとか終えました。
そして女医さんのいったひとこと「あなたの場合はね、頭が悪い、頭の検査をしておいで」と。
をいをい俺は客だぞ、客に向かって頭が悪いとかナチュラルに悪口じゃねーかw と思いましたがそこは四十を超えたおっさんなので話しを聞くことに。
なんでも、下垂体という脳のホルモン分泌バランスセンターが肥大して、デカなって、その上にある視神経の左右クロス部分を圧迫している。
このまま圧迫が続くと、視野の見えなくなる範囲が広がり脳溢血の危険性も高まる、と。
そもそも眼科の検査もお金が高かったのですが、脳外科の案内をされて、脳外科でMRIスキャンをするはめに。
MRIスキャンて、ある所はコンパクトに用意されているものなんですね。
そしてまた出費……。
で、
明らかに、脳内の各種ホルモン分泌を調整する下垂体という組織が異常に肥大し、視覚を司取る視神経を隅っこの方に押しやっているのは間違いないということにになり……。
はてさて視神経を助けるために今回腫瘍を摘出しようとすると、他の正常ホルモンを分泌している組織にダメージを与える可能性も否定できないことです。
これは結果論でしか賭けられないことなので、やってみるしかない。
というわけで作者本人は「手術が失敗して意識が戻る見込みがないってなった時は、僕の生命維持装置はオヤジ殿が止めるように」と言い残して手術台に上がりました。
酷い四十代です。
オヤジ殿はちょっと涙目になっていましたが、自分の命を預けられるのはオヤジか長男くらいで、長男はまだ小学生だったので他に選択肢はなかったのです。
ところが、現代手術は素晴らしい。
ぶっちゃけ看護師さんの「そろそろ眠くなりますよー」という声を聞いて、気持ち長めに目を閉じて、目を開いたら「はい、おわりです」といわれました。
こええ、意識の無い間になにされたんだよ。←治療されたんだよ。
治療後の状況はすこぶる順調で、薬価の低いステロイドぐらいが日常的に投薬されることとなりました。
ステロイドの投与自体は体の新陳代謝を活発化させる機能で、順調ですこぶる前向きな症状でした。
ただ、その後、数ヶ月して鬱病の診断を受けるようになったなりました。
ショックでした。
前向きに覇気をうちだしたくとも、後ろ向きの考えしか着想できない。
自分が消えてしまうことが一番の解決策のように思えてしまうが、そこはふみとどまる。
なんでも「下垂体の腫瘍を取り除くことで、幸せホルモンの分泌も低下する可能性がある。
ただ、幸せホルモンの分泌量に規定値はなく、現代の医学的には調べる方法もない」とのことで、「科学的に疑われるが検査する方法も、治療する方法もない」という状況です。
コレが辛かった。
とにかく、ささやかながらも家族を抱える身、這ってでも出勤しなければならない。
しかし仕事に取り組まなきゃ一家離散ですが、仕事が進まないんです。
それでも、あれをやんなきゃ、コレをやんなきゃに終われて、なんとか、なんとかこなす日々。
土日はダメ、「あー、これじゃ評価落とす。
評価上げるための工夫は何一つ出ない。
もーむり、もーむり動けない」
と、一家の大黒柱であり、二児の父親でもある自分が終日布団にうずくまる始末。
布団にうずくまる間も心は自分を攻撃してくる。
でもね、答えなんてない、どうしよう、どうしよう、どうするの、どうするつもり、寝てる場合じゃないんだよという焦りだけが上から上から襲ってきて寝てしまう。
正直ね、鬱病になる前は心のどこかで「怠け病でしょ」という印象を持っていました。
はい、正直にいいます。
鬱病になってみると違った、マイナスの要因が次から次へと洪水のように押し寄せてきてどうすることもできない、取りあえず寝かせて落ちつかせて、横になっても寝付けるとは限らないんだけど起き上がっているのも「どうする、どうする」が押し寄せてくるのでむり、もー、限界。
寝て、起きれば時計の針ぐらいは読めるので、また、こんなに時間を無駄にしたんだという後悔が襲ってくる。
それでも、子供達との決まった食事の時間くらいは姿を現さないといけない。
だって私、父親だもん。
でも、妻にいわせると、常に机の一点を見つめるばかりで返事も薄く、明らかにおかしい状態で食事だけ黙々と取る様子は異常だったということでした。
なけなしの努力も無意味。
思春期の子供に半ゾンビの父親の姿って悪影響でしかないと思う。
それでも、姿を見せないよりはましなんではないかと食卓を囲む。
後に妻からは、会話を選ぶのも一苦労だったとコメントをもらいました。
ほんとに自分が情けない。
そして食事が終わると寝室に駆け込む始末。
端から見れば怠け病、クズですね。
でも、自分でもどうすることもできないグルグル感で精一杯。
「ああ、つまりこの状況が、病気、なんだ」とだけ自覚してました。
平日になると、体は起きてくれるのでなんとか出勤し、あれこれと片付けものに取り組みますが、新しい着想なんて出てこない。
立場的にはだめ人間確定。
周りの人と相談し、その人達のアイデアももらい、何とか形にまとめようとして、中途半端なものを作る日々。
それでも、薬を変えて飲み続ける中で、なにかを見いだせる日が来るかも知れないと、年下の先輩、上司に指示を仰ぎながら右往左往している日々が続きます。
誕生日が一日違いの執行役員さんがいて、彼はきびきび働いている様子。
彼はいろんな部下に指示を出す。
私は、そんな部下さん達の指示を仰ぎ、彼女たちの満足のいく資料一つも作れない有様。
もちろん彼にも歩んできた道があり、私にも積み重ねてきたものはあったはずなのですが、彼の道は更に上をめざして続いている様が見えているのに、私が積み重ねたものはゴミ同然と踏みつけられている。
四十八。
もう、見えているとはっきり自覚しなければならない年ですよね。
そんな中で病状が、鬱から多分双極性障害に切り替わった瞬間が降りてきて、俺ツエーの文章を書き始めたのが二〇二一年の三月下旬。
ここから「あのシーンも描きたい」「このシーンも描きたい」「ここでキャラの入れ替えをしたい」「ここでキャラのメリハリをつけるためにあのキャラ投入したい」とふわふわふわっと浮かび上がったのが徹攻兵だったのです。
書いてる時は、調べ物も辛かったが楽しかった。前向きに進んでいる実感が数年ぶりにありました。
……、まあ、家庭を支える大黒柱としては、まるっきり生産性のない方向に突き進んでいて、子供達を路頭に迷わせかねない状況が改善はされていないのですが
主治医に双極性障害のことも相談しましたが「元気に小説かけてるだけならそれを押さえることもないし、あなたの場合鬱の症状が酷いから、薬を変えることはないね」といわれまして、そのまま、抗うつ剤は飲み続けています。
取りあえず診断名は鬱病のままです。
のーてんきでもいい、明るい日常を取り戻したいです。
そんな四十八歳がアクション小説を書きました。
もし、お気に止まりましたら100話までの本編をご笑覧ください。
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