第006話 会議室

 輝巳がようやく会議室にたどり着いた時には、既に遊、堅剛、宇も揃っていた。

 信世を含めた五人は、中学からの古なじみだ。

 輝巳も、自然とほおがほころぶ。「よう、どうしたよ?」

 腕組みをした堅剛が皮肉混じりの笑みを浮かべる。

 「信世、説明してやって」

 「これで四回目なんだけど」

 信世が自嘲する。

 「尖閣が占拠されたので皆殺しにしろ、だって」

 輝巳があきれる。

 「はあ、それ、俺たちのやることじゃなくない?」

 信世は黙ったまま居並ぶ将校に顎を突き出す。

 一通りの説明が終わると宇が切り出す。「輝巳はどうおもうの?」

 輝巳は斜め上の天井を眺めながら考える。「うーん、理にかなってると思うよ。

 俺たち以外の本職がやるんなら」

 堅剛が口を開く。「そうなんだよ、俺たちにやらせる理由が分からない」

 遊が口を挟む。「秘密裏に行うには少人数なら少人数ほどいい。そうなると徹攻兵が一番のぞましいってことになる」

 輝巳が皮肉に笑う。「最大戦力の投入が作戦成功の常道だけどな」

 遊が反論する。「だから、俺たちなんだろ」

 輝巳が今度はまじめな顔を作る。「なあ、みんなさ、俺、気がついちゃったんだけど」

 両肘をテーブルにつき、組んだ拳を、顔の前に掲げる。「俺が見てるアニメだと、だいたいこういうのは十四、十五の少年少女が選ばれて、克服して、成長していくもんなんだけど」

 冗談のためにまじめな顔を作ったのかよ、と仲間達はあきれる。

 信世が答える。「現実は五十手前のおじさんおばさんが選ばれちゃったみたいよ」

 宇がテーブルの上に上半身を伸ばす。「アニメじゃない、かー。

 で、輝巳はどうするの?」

 「やるよ」

 この一言で、退屈そうだった将校達の顔色が色めき立つ。

 「たださ、住宅ローンの返済が苦しいんだよね。一人二千万、五人で一億でどうかな?」

 宇、堅剛、遊のそれぞれが、考え込む中、信世が苦笑いする。「仮にそれが出るとしても、私のところには来ないけどね」

 宇がたずねる。「なんで?」

 「私、予備自衛官だから、規定の手当の範囲内しか降りてこないのよ」

 堅剛が笑う。「ほんと、アニメじゃないなあ。

 俺もそれで付き合うよ。

 あ、輝巳の条件で、だよ」

 そして遊が頷くと、宇が諦めた「もー、しょうがないなあ」

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