第059話 季節

 季節は、そのただ中に身を置くもの達にとってはあっという間に過ぎていった。

 二〇二四年、先に〇六式の慣熟を終えたのは七生だった。

 七生には一八式を超えて第五世代試作型への対応の期待が、所属する海上自衛隊側から寄せられていた。

 二〇二五年、七生に続けて、道照が〇六式の慣熟を終えると、突き放すように明理も一八式の慣熟を終えた。

 二〇二六年初春、輝巳が第五世代試作型の慣熟を終えると、二六式装甲服として制式化された。

 二〇二七年になると、遊も二六式装甲服の力を余すことなく発揮し、皐月が二六式に二十パーセントながら対応、明理も二六式に十パーセントながら対応、七生が一八式に七十パーセント対応、道照が一八式に五十パーセント対応するなど、世代が、確実に上がっていった。

 武多の発案で、二六式からは装甲服に個別の色を認めることにした。

 輝巳は黒鉄色、いわゆるガンメタリックを選んだ。また、フェイスマスクのこめかみの部分、ちょうつがいの位置から斜め後ろに生える短い角を左右に設けた。

 遊は、絵心のある道照とも相談した上で、オフホワイトに赤いラインを入れた、いわゆる、試験機模様を入れた。

 二六式はガスマスク部分が廃止されたこともあり、関係者の目には、完全に新時代の徹攻兵の姿として映った。

 徹攻兵の情報自体は、アメリカを中心に動画を増やし、各国とも第三世代型による高圧砲の砲撃訓練の様子を発表した。

 それは、地上最強の主力戦車や、その主力戦車に対抗しうる攻撃型ヘリコプターを無効化するものであり、肉薄することでそれらに対抗しうる携帯型ロケットランチャーも無意味にする、新時代の兵力だった。

 各国とも、戦闘機のパイロットの素性以上に顕現者の身元は固く伏せられていた。

 また、徹攻兵の正確な数も伏せられていた。

 世界の軍事アナリストは、アメリカが最も多くの徹攻兵を保有していると分析していたが、実際にはドイツの約二百五十人を筆頭に、自衛隊が二百十、ゼライヒ女王国が百八十、アメリカが百二十、オーストラリアが百十という状況だった。

 ゼライヒ女王国とオーストラリアが徹攻兵を保有していること自体伏せられており、それぞれ、主力の全数がフランスとイギリスに派遣されていた。

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