私と婚約者の関係はあまりよろしくありません。
エルフィール家の長女して生まれてから、
婿を迎えるとこが私に課せられた
義務だと教わりました。
その事に関しては、
何の疑問も不満もありません。
ただ、そのお相手がちょっと・・・
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私の婚約のお相手は辺境伯の
ウィルシュタイン家の三男である
エルイン・ウィルシュタイン様です。
濡羽色のクセのない髪に
深い藍色の目をした見目麗しいお方。
一方の私は、
銀色に近くグレーがかった
ゆるいクセのついた髪に
アメジストを濁らせたような目を持つ
奇妙な容姿でした。
容姿だけでも婚約者に相応しくないと
感じてしまうのですが、
それだけではなく勉学もそうでした。
エルイン様は私と同い年にも関わらず、
5歳から8歳までを隣国で過ごされ
他文化に触れられたからなのか
柔軟な思考をお持ちでした。
私の父と似ていて自分の考えを
周りに伝えることを
面倒に感じているようですが・・・
そもそもこの婚約は、
父から持ちかけたものです。
次期伯爵家の当主 兼
騎士団長として育てる為に
年頃の婿を探していたところ、
国の守りの要である辺境伯へ
白羽の矢が立ったのでした。
同じ伯爵の爵位を持つもの同士ですが、
一般的には強い軍事力等を持つ
辺境伯の意見が優先されます。
当然断られると思っておりましたが、
なんと先方からは快諾のお返事が・・・
こうして身分不相応な
婚約が締結されたのでした。
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今日は月に一度の婚約者様との
お茶会の席です。
今まで一度も休むことなく
足を運んでくださるエルイン様。
それだけでもとても嬉しいのです。
たとえ、その表情が変わらなくとも・・・
「エルお兄たま・・・おねえたまのこと嫌いなの?」
沈黙のお茶会でいきなりエミリーが
舌っ足らずの拙い言葉遣いで
エルイン様に問いかけました。
私は驚きのあまり言葉を失い
エミリーを止めることができません。
「エルお兄たまは、おねえたまと喋る時に楽しそうじゃないよ?エミリーはおねえたまが好きだからお話すると楽しいけどエルお兄たまはそうじゃないの?」
なんと・・・ここには天使が・・・
つい衝動に駆られた私は
目の前のエルイン様を放置して
エミリーを抱きしめてしまいました。
その瞬間、エルイン様は
一気に機嫌が悪くなったようで
私の方を睨みつけてきました。
「も、申し訳ございませんッ・・・」
慌ててエミリーから手を離し
目の前の椅子に座り直します。
次に出てくる言葉が何なのか
想像もつかずにひたすら
自分の手元に視線を落として
婚約者から向けられる
鋭い視線に耐えていました。
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