第14話 決着

 大質量になったグラシャ=ラボラスがグラウンドに叩きつけられ、油田が湧きあがったように黒い血の飛沫が散った。

 グラウンドにはまっ黒な池ができて、同時に黒い雨が降ってきた。

「Yeahhhhhhhhhhhhhhhhh!!!!!!!!!!!!!!」

「Gehe、Gehe! Gehehe!」

 わたしは両手を上げて血の雨のなかをぐるぐると回る。

「ほんとにやりやがった! なんで生きてんだおめぇ!」

「最っ高だね! 人生でいちばん最高な瞬間更新しちゃった!」

 わたしは顔にべっとりとついた悪魔の血を手の甲でぬぐう。

 そして血だまりを歩き、夜宵のもとに向かう。

 夜宵は黒い池で絵画みたいに横たわっていた。

「うっわー、まつ毛長っ! 何をどうしたらこんな顔で生まれてくんの?」

「冬子」

 ウナギが真面目な声で話しかけてくる。

「おめぇが仕留めた獲物だ。オレからどうこう言うつもりはねぇが、こいつだけは茨の道だぞ」

「燃えんじゃん。短い命なんだから、石ひとつない道歩いてもしょうがなくない?」

「友愛クラブだけじゃねぇ。冬子がこいつの味方をするなら、悪魔でさえも敵になる。百害あって、一利もねぇ」

「わかってないなぁ、ウナギは。百害あって、万利あるんだよ。わたしには。わたしは、この世界のすべてを手に入れる。だから、これははじめの一歩」

 夜宵の体をお姫さま抱っこで抱えあげる。

 悪魔の血がグラウンドにぽたぽたと滴り、長いおさげが地面に向かって垂れていた。

「わたしは、この世界のすべて手に入れる。邪魔するヤツは、ひとり残らず食い千切る」

 わたしは夜宵の体を抱えて、グラウンドの出口に向かう。

 鉄の扉を開けて、公園をあとにする前に、わたしは振り返る。

 まっ黒な湖面には、まん丸い月が浮かんでいた。

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