第11話 アユムの闘い

「いくぞ!みんな!」


 4人がオンライン状態になったのを確認してアユムは声を上げた。


「なんか今日はいつもにまして気合い入ってない⁇」


 アリサがアユムの姿を見て言う。


「は?そんな事、ねぇし!」


「アユム先輩!」


 レナの声にアユムは再びどきりとする。


「頑張りましょーね!」


 レナのアバターが両手でガッツポーズをして言った。やべー、かわいい。これはもう、頑張るしかねぇ!


「おやおや〜?」


 アリサはアユムとレナを交互に見ながら面白そうな表情をした。


「なんだよ?」


とアユム。


「なんでもな〜い。」


この時、


「うわぁ!」


背後からどん兵衛が声を上げる。


「撃たれてる!撃たれてるよ!」


「くそ、いきなりか!みんなどこかに身を隠せ!」


 アユムは岩壁に身を隠しながら叫ぶ。レナがオレの後ろにぴったりとくっつき同じ岩影に身を隠す。

ちょ、レナ?近くないか?

ゲームの中でも背中にレナの感触を感じ、アユムの体温が上昇した。ついでにアユムの下の部分も上昇した。

え、これ、やばい。息遣いとか聞こえて来る。


「助けてー。」


 どん兵衛の声に我に返る。遠くでどん兵衛のアバターが身体を引きずっているのが見えた。ダウンさせられたのだ。


 助けにいかなければ。だけど、敵の位置が掴めない。それにまだゲームが始まったばかりで、アユムのキャノン砲のパラメータはほぼ空に等しかった。こんな状態でどん兵衛を助ける事なんて‥


「私、どん兵衛さんを助けに行ってきます。」


「だめだ!敵がどこにいるかも分からないんだぞ!」


アユムはレナに向かって言う。


「でも、このままじゃ‥」


「うわぁ‥!」


 どん兵衛の叫び声。くそ!またこんな時に、オレは役立たずだ!アユムは自分の力の無さに腹が立った。でも、どうすれば‥!


 その時、昼休みにいつかアリサと交わした会話を思い出した。なぜゲームに参加するのか。その問いにアユムは答えた。レナにいいとこ見せたいから。アリサは言った。じゃあ頑張らなきゃね!そうだ!リアルで一個もいいとこないからゲームで頑張ろうって決めたんじゃないか。ここで逃げ腰になったら、オレの事すごいって言ってくれたレナに、申し訳が立たねぇじゃねぇか!


「レナはここで待ってろ!オレがどん兵衛を助けに行く。」


「アユム先輩!」


 レナの声を背中で受けながら、アユムは岩陰から飛び出した。待ってろよどん兵衛!今助けるぞ!アユムは自分のミリタリーバッグの中から応急処置用プラグを取り出しそれを握りしめる。どん兵衛までの距離は、大体10メートル。


 その時だった。どん兵衛に近づき銃口を向ける敵の姿をアユムは見た。顔は顔面蒼白の、死人のような顔をしている。そいつはダウンしているどん兵衛に向かって何発も銃弾を撃ち込んだ。それからこっちを見て、不敵な笑みを浮かべる。くそ!なんなんだこいつは!そいつは不敵な笑みを浮かべたまま、こちらに銃口を向けた。やられてたまるか!

アユムは敵の射撃をすんでのところでかわし、自分の右手と一体となったキャノン砲で敵を思いっきり殴りつけた。あまりの衝撃の強さに敵はふらふらとしている。もう一発!

アユムは再び思い切り殴りつける。

一つ分かった事がある。FPSにおいて、殴るというアクションも立派な攻撃の一つである。

弾切れを起こした時、あるいは武器を所持していなかった時、自分の身を護ことが出来るのは、己の拳だけだ。

そしてオレの装備。ロックスーツ(今名付けた)は圧倒的に、肉弾戦が強い!


「おらぁ!」


 アユムは敵がダウンするまでキャノン砲で殴りつけた。その時だった。アユムの体は宙を舞った。何があったか、アユムには理解が出来なかった。空が見えた。白い雲も。ゴォゴォと耳障りな音がする。それから一機の戦闘機がアユムの視界に入ってくる。


「は?戦闘機」


 その戦闘機から、無数の爆弾が投下され、地上は焼け野原となる。

戦闘機の操縦室。パイロットの顔が一瞬だけ見えた。そいつはこちらを一瞥すると、ニヤリと笑った。

シュウジィィィィ!!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る