第5話 アユム、撃たれる

『Gun's World online』


 初めてこの世界を体感した時、アユムは驚嘆した。それはVRなどと言う領域を遥かに超えていた。手で触れたもの、目で見たもの、匂い、音、5感で触れる全てのものが現実世界と相違なかった。


 ただし、ゲームの中で疲れると言う事はなかった。ついでに感触はあるのに痛みも感じなかった。だから銃で撃たれてもただ動けなくなるだけだ。もちろん最初撃たれた時は心臓が飛び出るほど驚いたし、確実に死んだと思ったが。


 これだけの再現性のゲームが世間に知られる事なく創られている。これは大学進学、大企業就職を約束するという話もあながち嘘ではないのかもしれない。


「先輩‥」


後ろからレナの声がする。


「大丈夫でしょうか。私が言ってしまった事なのですが、、この穴、行き止まりだったりしないでしょうか。」


 レナにそう言われて、なんと答えていいか分からなくなる。アユムも同じ懸念を抱いていた。


 しかし、後ろからアリサがアユムを小突き、我に返る。そうだった。オレは、レナにいいところを見せるためにここにいるんだ。


「大丈夫だ!マップでもちゃんと進んでるし、もし行き止まりでもオレが責任持つから!」


アユムは明るい声で言った。


「先輩、、ありがとうございます。」


レナがホッとしたように言う。


「やったじゃん。」


アリサが小声で呟く。

くそ、アリサのやつ、レナに聞こえるだろ。

アユムは内心そう思いながらもアリサに感謝していた。そうだ。これはあくまでゲームなんだ。心を乱しちゃいけない。

目前に現れた外の光が、アユムをより一層勇気づけた。


「みんな、見ろ!抜けられそうだぞ!やっぱりここは近道ができる抜け穴だったんだ!」


アユムはしゃがんだ姿勢のまま早足になる。

そして洞窟を抜け‥‥


視界が真っ赤に染まる。


「待ち‥‥伏せ‥⁇」


 FPSのゲームでは良くある事だが、自分がやられてしまってもしばらくはパーティのメンバーの動向を見る事ができる。


 完全に死亡せずダウン状態であれば、仲間から応急処置用プラグを刺してもらう事で復活できる。だからアユムは自分がダウンして地面に突っ伏した状態で後の惨劇を見ていた。


 まず後に続いて穴から出てきたアリサが戦闘態勢に入るも複数人に撃たれてダウン。銃弾をかわしつつ、アユムとアリサに応急処置用プラグを打とうとレナが奮闘するが、結局動きがガタガタになってしまいダウン。

ちなみにこの時の流れ弾でアユムとアリサは死亡。ついでにこの時、ニヤリと残忍な顔を浮かべる相手プレーヤーがシュウジである事に気づく。


 これはダメだと引き返そうとした最後のパーティメンバーのどん兵衛は後ろから撃たれてゲームオーバーとなった。

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