第4話 アユムと抜け穴

 アユムは回想中にふつふつと怒りが湧いてきて気づいたら思った事を口に出していた。


「いい大学に行って、いい企業に就職してってのがそんなに大事な事なのかなー」


アリサはアユムに尋ねると言うよりは独り言のようにそう言った。


「そりゃあ、勉強せずにゲームだけしてればいい大学入れるんだからみんな頑張るだろ。」


「そう言うもんかー」


アリサは空を見上げながら言う。今日は晴れていて青い空に点々と浮かぶ白い雲が綺麗に映えていた。


「アリサはなんで毎日オレらと闘ってくれるんだよ?」


「だって、私もおんなじパーティなんだから一緒に好成績出さないとだめじゃん?」


「それは、そうだけどな。」


「アユムは?なんでやってるの?有名な大学いくため?」


 アリサはアユムの方を見て尋ねる。アユムはそう言われて言葉に詰まる。なんで?あんまり考えて来なかった。

クソ担任に言われて、みんなもやってるから言われるがままにゲームに参加していた。勉強するより面白そうだなって単純に思ったから。

でも、よく考えると今は少し違うかもしれない。


「それは、、」


言葉に詰まる。


「それは?」とアリサ。


「レナにいいとこ見せたいから。」 


「じゃあ今夜も頑張ろう!」


アリサはふっと立ち上がると、両手でガッツポーズをしてニッと笑ってみせた。



「急げ!進め!」


アユムは声を張り上げる。後からアリサ、レナ、それから少し遅れてどん兵衛がついて来る。

その数100メートル後から、領域を狭めるリングが迫ってくる。

リング外に一定時間留まってしまうとゲームオーバーだ。


「どん兵衛!急げ!」


アユムは階段を駆け上がりながら言った。


「待って〜」 


どん兵衛が太い声を上げる。どん兵衛の装備はかなり重量がある。他プレーヤーより遅れをとってしまうのは仕方のない事だ。しかし、今はそんな事言ってる場合じゃない。


「直線距離で進めないの厄介だなぁ〜」


アリサが不満を漏らす。


「ほんとにな。」


アユムも同意する。

くそ、リング内の安全領域はすぐそこなのに岩壁に阻まれて回り道でしか進めない。岩壁に沿って設置されている階段を登り、そこを越えるしか手はない。

次第に焦りが湧いてくる。


「先輩!」


レナの声。アユムは振り向く。


「レナ?どうした?」


「ここ!抜け道があります!階段を登らなくても、もしかしたらここから安全なエリアに抜けられるかも。」


アユムは迷った。岩壁にはたしかに小さな穴が空いていた。しゃがんだ姿勢であればなんとか入れそうな穴だ。

でも、もしこの穴が途中で行き止まりだったら?

アユムはレナ、アリサ、どん兵衛の顔を見る。

ええい!迷ってる暇はない。


「よし!この穴を抜けよう!」


アユムはしゃがみ込んだ姿勢のまま穴に突入した。

かなり進みづらい姿勢だが、モタモタしてる暇はない。

これ、ゲームじゃなかったら相当しんどいだろうな。アユムは真っ暗な穴の中を進みながら考えた。

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