第2話 アユムとレナ
オレは忘れはしない。とアユムは回想する。初めてこいつとパーティを組んで戦場に出た時の事を。
「君たちに与える装備は一人一人初めから決められている。君たちの今の実力、個性、ポテンシャル、その全てを判断してこちらで選定させてもらった。いわば君達だけが使える代物、特注品というわけだ。」
オレ達のクソ担任はこのイカれたゲームを始めるときにそう言った。
そうして戦闘マップに出てみると、たしかにパーティの装備は一人一人違った。
頭のおかしな事にこの長野原アリサの装備は、ライトマシンガンMK46がデフォルトで装備されている。
さらには軍人が持つようなヘルメット、ベスト、ブーツ、サバイバルナイフに手榴弾まで。
この装備さえあれば、戦闘に置いてまず他プレーヤーに引けを取らないだろう。
それに対してアユムの装備は‥‥
全身黒色の装甲、顔だけ素肌が出ており、後はタイツのように全身繋がっていた。
武器はというと、右手と一体化したキャノン砲‥
アリサはアユムの装備をまじまじと見てそれから一言発した。
「ロッ○マンじゃーん!!」
「って誰が○ックマンだよ!!誰もピンとこねーよ!!」
アユムは机をバンと叩く。
「いや、あの装備ね‥、わたしは、かっこいいと思うよ?」
アリサは笑いを堪えてプルプルしながら言う。
「やかましいわ!」
アユムはすかさず突っ込みを入れる。するとアリサは少しまじめな顔になって言う。
「でもでも、昨日のアユムはほんとにかっこよかったよ?」
「え、昨日のって?昨日も惨敗でしたけど?」
アユムは聞き返す。
「ほら、あれだよ。しゃべるな、今助けてやるぞ、レナ‥ってやつ。」
アユムは自分の顔が火照るのを感じた。
アリサは再びわざと低い声で言う。
「レナ。オレが、いま、助けてやるぞ。オレのレナ」
「やめろぉぉ!」
「ほんとアユムって分かりやすいよねー。」
アリサはニヤニヤしながら言った。
昼休み、校内の売店へ行こうと廊下を歩いていると、前から長い茶髪の、小柄な女の子が歩いてきた。
「あ、こんにちは。」
「あ、おう。」
2人はすれ違いざまに他人行儀な挨拶を交える。
くっそー、なんだよ。もっと色々話したいのに、オレのヘタレ野郎!
アユムは心の中で毒づいた。
「あの、‥!」
後ろからレナの可愛らしい声がした。
オレは心臓をどきりとさせて降り向く。
「先輩、あの、昨日は、助けに来ていただいて、ありがとうございました。」
レナは恥ずかしそうにそう言った。
その様子に、アユムの体温は急激に上昇する。
「お、おう。」
「では、また今晩お願いします。」
レナはぺこりとお辞儀をしてきびすを返し、走り去っていった。
アユムはその背中をボケーっと眺めていた。
それから一言。
「かわいいな。」
「うわ、キモっ」
隣から聞きなれた声。
「アリサ!いつからそこにいた!?てかなんでここにいる!?」
顔面を真っ赤にして、アユムは絶叫する。
「やだなぁ、私も焼きそばパン買いに行こうと思ってただけなのにそんないい方。
てかさっきの何??お、おうって!
アユムはなんでゲームの世界だと頼りになるのに、リアルだとこんなにヘタレなのかなぁ?」
アリサははぁとため息をついて言った。
「うるせぇよ。誰がヘタレだ。そんなに、
そんなにはっきり言わなくてもいいじゃんか。」
アユムは初めは強気な声で言っていたが、語尾の方になるにつれだんだんボソボソ声になっていく。
「まぁいーや、早く焼きそばパン買いに行かないと昼休み終わっちゃう〜」
「ちょっと待てよアリサ!」
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