第1話 アユムとアリサ
全く、昨日は散々だった。
結局1キルも出来ずに部隊全滅。用意周到に作戦を立てたにも関わらずだ。
一体いつになったらオレたちのパーティは成長するのだろうか。
アユムは眠い目を擦りながら数学の授業を受けていた。
しかし、内心はすでにどうやって今晩1キルを奪い取るか、その事しか頭になかった。
アユムは窓側の1番後ろの席から、最前列で背筋を正して授業を受けているシュウジを見る。
くっそー、まじめに授業なんて受けやがって。
昨日あいつ1人で何キルしたんだよ。
オレだって装備とパーティーさえ良ければ10キルや20キルなんて余裕なのに‥
「おい、西山!聞いてるか!問20だぞー。」
アユムは先生の声で我にかえる。
あ、やべ、分かんね!
オレの戸惑う姿にシュウジはこちらを見て苦笑いする。
そして前の席でクスクス笑うアリサ。
「も〜何やってんのアユム。ここ!問20。答えは4xだよ。」
アリサが顔を近づけて、ひそひそ声で言う。
「4xです。」
「西山ー。違うぞー。」
違うじゃねーか!
アリサがこっちに手を合わせ、
「てへ、めんごめんご〜」と戯けて見せる。
くそ!こいつ、昨日の事といいどんだけオレを馬鹿にすれば気がすむんだ?
オレの目の前に座っている長野原アリサという女。
それはアユムの大事な大事なパーティメンバーだ。
肩までぐらいのセミロングの黒髪にクリっとした目が特徴だ。性格はかなり人懐っこくて、顔もかなり可愛い。ちなみに胸もけっこーでかい。
ここまで完璧なのに、残念なぐらい頭が弱い。
最近では何故か独りリングが縮小している最中、反対方向へ突っ走って行ったり、塔の上から飛び降りて、エリア外へと飛び込むという見事なスカイダイビングを披露してくれたりと、それはまぁかなり足を引っ張られている。
「さっきはごめんね〜。でも最近アユムボォーとしてる事多いよね。どったの?」
休み時間になり、アリサはアユムの机に両手で頬杖をついて聞いてくる。
「どったのじゃないよ!」とアユム。
「オレらのパーティだけまだ1キルもしてないんだぞ⁇分かってる?もう2ヶ月も経つのに!」
アリサはありゃ?っととぼけた顔をする。
「いちきるってなんぞ??」
アユムはため息をつく。
「敵を倒してないってことだよぉ!4人でやってまだ1キルも出来てないなんてもうオレ達のパーティーぐらいじゃね!?てか最近オレら狙われてるよね?どう考えても!」
アユムは声を大にして言う。
「いやぁ、そんなの自意識過剰だってぇ。気楽に行こうよアユムくん。」
アユムは頭を抱える。
「もうダメだぁ。オレらが弱小な事がどんどん学校中に広がってくんだ。そしたらオレら学校中から標的にされるよ?1キルもできずに華の高校生活が終わっていくよ?アリサさんはそれでもいいって言うのかい⁇」
んー、と考えるアリサ。
「アユム君がいるからきっと大丈夫だよ!それにどん兵衛君も!」
アリサは右手でガッツポーズをして言う。
「何を根拠にだよ!」
アユムは突っ込みを入れる。
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