第10話 第1回戦(4) M&Aカルタ

「第4戦はM&Aカルタ大会。最初に3枚とったチームが勝ち抜け。

 とれなければ敗退ね……」


フユミは険しい顔で呟きながらカルタ会場に入った。


このカルタは第1回戦で勝ち抜けできていない5チームによる最終決戦である。


(もう、私自身しか頼るものはない。やれる、私ならやれる!)


――女子アナがカルタを読み始めた。


「“い”ちばん最初にもらうもの。“イ”ンフォメーションメモラン……」

「はい!」バシッ


「“ば”りばりモデリングしていこう、“バ”リュエーション……」

「はい!」バシッ


一人の男性が2連続でカルタをとり、いきなりマッチポイントを迎えてしまった。


(ひとりめちゃくちゃ強すぎるやつがいる。次取られたら最後だ。どうしよう)

不安そうにその男を見るフユミの表情に覇気はない。


しかし……


(……ん?あれ?よく見ると……こいつなんか陰気っぽい。……はっはーん)

フユミの瞳に野生の鋭さが戻った。


(なるほど、こいつ……童貞だな?)


フユミの口元に笑顔が戻る。相手が童貞と分かれば、もはやフユミの敵ではない。


女子アナが3枚目の朗読を始めた。


「“い”つ出すの?今でしょ?意向表明(“い”こうひょうめい)」


その瞬間、フユミは相手の手の動きのみに集中していた。

そして、相手がカルタをとろうとした瞬間に自分の手を軽く触れるようにぶつける。

と、同時に小さく「きゃっ♡」と声を漏らす。


相手は一瞬びくっとして手を引っ込めた。

その隙をぬって、難なく1枚目をゲット。名づけて、『純情アタック!』


相手の顔色が明らかに赤く染まり、もじもじし始めた。


次の朗読が始まる。

「“で”きるかな?しっかりリスクの洗い出し。“で”ゅーでぃりじぇんす」


その瞬間、フユミは大きく上半身を揺らした。

当然、Fカップのおっぱいが大きく揺れる。


――相手の視線は完全にフユミの胸元にロックオン状態だ。

フユミは難なく2枚目をゲット。名づけて、『視線くぎ付けぷるんぷるん!』


次はついに最後の1枚、どちらがとるかで勝負が決まる。


相手もさすがに危機感を感じたようで、顔をたたいて気合を入れなおしている。


(甘いわよ。もうすでにあなたは私の術にはまってるんだから)


そして最後の1問が始まった。


「“さ”いごまで、気を抜かないように。最終契約(“さ”いしゅうけいやく)」


そのとき、フユミは上半身を深くかがめた。


少しルーズなシャツの胸元から、Fカップ谷間がちらりと顔を出す。


もちろん、正面に座っている童貞くんがそれを見逃すはずはない。


彼の視線が胸元に移った一瞬のスキをついて、フユミは3枚目もゲットした。

名づけて、『Fチラ大作戦』


「チーム東大FA、勝利!」


こうして、フユミの活躍により、チーム東大FAはなんとか第2戦に進むことことができたのであった。


「……はぁ、また無駄に女子力を使ってしまったわ」

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