第9話 第1回戦(3) M&A早押しクイズ

「第3問は早押しクイズだって。

 しかも、問題を出題するのはスペシャルゲストらしいわよ」

「来たな!これは確実だ」

チーム東大FAは自信満々だった。


なぜなら、過日の地区予選の2回戦、アイドルに握手するために脳みそ回転率120%を実現した男、ケイスケがいるからだ。


普段はクールで斜に構えているケイスケであるが、スペシャルゲストと聞いて珍しく気合満点だ。


回答席に立つと、回答ボタンの1mm上に右手をセットし、いつでも即答できる体制でスタンバった。


その姿は、まさに『覚醒ケイスケ』だった。


「それでは紹介します。今をときめくスーパーアイドル『まっ坂30』のみなさんだ」


「「うおおおおおおー!!」」


流石、全国大会である。


地区大会で採用されていた地元ローカルアイドルではない、正真正銘の全国区の国民的アイドルグループを採用してきたのだ。


会場の盛り上がりは最高潮に達した。


「「経済学部のみんな、第2問がんばってねー!」」


超正統派アイドルの登場で、チーム東大FAのみんなは確信した。


(これは、もう楽勝中の楽勝ね。ケイスケ、秒で正解しちゃうんじゃない?)


そして、ケイスケの方に視線を向けたフユミは――凍結した。


――さっきまでの気合十分なケイスケの姿はそこにはなかった。


そこにいるのは、いつも通りの腑抜けとなり目の鋭さも消え失せた『ノーマルケイスケ』だ。


(なんで、覚醒が解けてんのよ???)


――スーパーアイドルによる司会が進行し、問題が朗読される。


そして、九州代表チームが答えた。

正解!!


正解者はステージでアイドルに囲まれて大はしゃぎだ。


ケイスケはとぼとぼと3人の元へ戻ってきた。


「……ど、どうした?体調崩したのか?」


ケイスケの急変ぶりに、流石に心配する3人。


そんな3人の気持ちなど意にも介さず、ケイスケはぶっきらぼうに答えた。


「ぼくローカルアイドル命なんで、国民的アイドルには興味がないから……」


「…………」


チーム東大FAに長い沈黙が訪れた。


――フユミは自分の心に語りかけた。


(次の第4問が最終問題。私の出番だ。

 私が正解しないと負け確定だ。頼りになるのは……自分だけなんだ)


こうして第1戦は4問目を残すのみとなった。残るチケットはあと1枚。

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