全国大会2回戦
第11話 第2回戦(1) M&Aケーススタディ①
4チームで争う2回戦の課題は『ケーススタディ』だ。
これまでより実践的な能力が求められる。
そして、チーム4人のチームワークも重要だ。
問題に対し一定時間でクリアできたチームは次の問題に進む。
クリアできなかったチームは即敗退。
そうして、2チームに絞られた段階で2回戦は終了し、その2チームが決勝にコマを進める。
4チームのメンバーがスタジオの回答席に並んだ。
回答席には、PCが4台。そして回答用のホワイトボード。
「それでは、第2回戦のケーススタディ問題はこちらです」
司会者が指をさすと、ステージの大モニターに問題が浮かび上がった。
『X自動車を株式価値を類似企業比較法で求めよ。
ただし、類似企業は日本の上位2社の平均値を用いることとし、
少数株主持ち分、プレミアムやディスカウントは考慮しないでよい。
X自動車の直近期EBITDAは1兆円。純有利子負債は5兆円。
制限時間は5分』
「「よーーーし!」」
4チームが一斉に話し合いを始める。
チーム東大FAでは、トシが早速提案を行った。
「まずは役割分担だ。フユミとミユキは類似企業のデータを調べて。ケイスケはエクセルで企業価値算出フォーマットを準備して」
「「おっけー!」」
さすがリーダーである。体力だけが自慢ではない。
早速PCに向かったフユミは日本一位のトヨ夕、ミユキは日本二位のホン夕の会社情報を調べた。
時価総額 =31.73兆円(トヨ夕)、6.19兆円(ホン夕)
純有利子負債 =20.56兆円、4.96兆円
企業価値 =52.29兆円、11.15兆円
EBITDA =3.84兆円、1.28兆円
EV/EBITDAマルチプル=13.6倍、8.7倍
二人が調べた財務情報を次々とエクセルに打ち込んでいくケイスケ。
「2社のEV/EBITDAマルチプルの平均値は11.15倍」
――これにX自動車の直近期EBITDA1兆円をかけて純有利子負債5兆円を引くと・・・
「できた。これが答えだ」
ほどなくして、ちょうど制限時間が訪れた。
全回答者の席に設置されたディスプレイにエクセルシートが映し出される。
『X自動車の株式価値=6.15兆円』
背景が赤く染まる。正解ということだ。
「「よっしゃー」」
4人がハイタッチ!第一問通過。幸先の良いスタートだ。
他の2チームも正解したものの、九州代表チームは時間内に回答ができず、ここで敗退。3チームが残った。
「おれのリーダーシップのおかげで正解できたな」
にやり顔のトシ。
「……たしかにね。でも、役割決めた以外は役に立たなかったけどね」
「うぐっ……」
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