第7話 第1回戦(1) M&A体力クイズ

「第1回戦は、チームの一人一人が自分一人でチャレンジする個人競技だ。

 4問のクイズの正解チームがひとつづつ勝ち抜けする。

 つまり、4問とも正解できなかったチームは敗北だ」


トシは第1回戦のルールをおさらいした。


「なるべく早く勝ち抜けて第2回戦に備えたいところだ。

 第1問は体力クイズ。体力なら俺に任せろ!リーダーだからな」

「「頼むよ、がんばって」」


体力クイズのルールは簡単だ。

番号のついた扉が4つある。

クイズの正解がわかったらその扉に飛び込む。

もちろん、正解の扉にはマットが敷かれているが、失敗の扉には――


トシは自信満々の顔でスタートラインに立った。


「それでは第1問、問題です。」


会場がシーンと静まり返る。アナウンサーが問題を読み始めた。


「M&Aにおいて、買い手が売り手から対象会社の株式を現金で買うことで買収する方法をなんというでしょう。①事業譲渡、②会社分割、③かぶしき……」


(チャンスだ!もちろん俺でも間違えようがない。株式譲渡に決まっている)


トシは持ち前の運動神経をフルに活用し、③の扉に向かって猛ダッシュした。

追いつく者はいない。


ガッツポーズを掲げながら③の扉をぶち破り飛び込んだ。


――その瞬間、アナウンサーの問題を読む声の続きがうっすらと聞こえた。


「……③かぶしきこうかん、④かぶしきじょうと……」


――(しまった!株式譲渡は④だったのか!早とちった!!)


時すでに遅し。トシは小麦粉プールに真っ逆さまダイブを決行した。



――顔を見合わせるフユミとミユキ。

でもなぜかそこに驚きの表情も、落胆の表情もない。


「予想通りね」

「……フユミ、そんなこと言ったらトシに悪いよぉ(といいつつ苦笑い)」


第1問終了時点で2回戦へのチケットは残り3枚。

ただしこれは女子2人にとっては想定内の状況らしかった。

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