第5話 予選最終問題は料理対決だ(2)
「4番目はチーム東大FAだ!さあ、料理を紹介してくれ」
アナウンサーの元気な声。
ミユキは審査員の手元にならんだ自分の料理を説明した。
「私が作ったのは、どこでも普通に作って食べられているクリームパスタです」
審査員はそれを食べながら答えた。
「これは、とてもおいしい。すばらしいパスタだ。
でも、これとM&A、どのような関係があるのかな?」
ミユキは、舞台袖に目配せをする。
すると、スタッフがワイングラスとボトルを審査員のテーブルに運んできた。
「料理はシンプルです。
でもこれに適切なワインを合わせると、料理もワインも格別においしくなります。
所謂マリアージュです」
そして、ミユキ自ら審査員のグラスにワインを静かに注いだ。
「M&Aは結婚に似ていると言われます。
対象企業と買収企業がマリアージュすることで、両社の相乗効果が生まれます。
この料理も単品では平凡なパスタです。
でもこのワインと合わせると最高の料理になります。
ワインも料理とマッチして最高の味わいを引き出してくれます。
ぜひご賞味ください」
ミユキが買い出しを指示したワイン。それは「シャルドネ」だ。
そんなに超高級というわけでもないが、クリーム料理に合わせると絶品のおいしさを引き立たせる。
ミユキは、説明が終わると一礼してさっさと舞台裏に引き返した。
なぜなら、自分も早くクリームパスタとワインを味わいたかったからだ。
舞台裏では、残る3人がおなじくパスタとワインを待っていた。
「もう、しょうがないなぁ。みんな一緒に食べよ?」
審査員の査定が終了し、メインステージでは審査結果の発表が始まった。
結果発表は先ほどのローカルアイドルが務める。
第4位はM&A's、第3位は鯛鰯カルパッチョ。
――ここまでは順当である。
優勝は二ツ橋と東大FAに絞られた。
「優勝は……(でんでんでんでん)」
トシは両手こぶしを握り締めて今にも爆発しそうだ。
フユミも緊張しているのか、巨乳の下で腕を組み指をトントンしている。
ケイスケは結果発表に興味があるのかアイドルに興味があるのかは不明だが、視線はステージにくぎ付けだ。
ミユキはこくりこくりと寝落ち状態。パスタとワインのマリアージュで酔っ払ったらしい。
「(でんでんでんでん)……関東地区大会優勝は、東大FA!!」
「よっしゃーーー!!」
トシはフユミとケイスケは手を取り合い喚起した。
そしてミユキにも声をかけると……
「……うん?そろそろプールいく?」
(……酔っ払って寝ぼけている娘はそっとしておこう……)
3人のやさしさであった。
やがて、表彰式が始まった。
メインステージに地区大会優勝者として立つ4人。
地区大会優勝メダルとトロフィー、花束を授与され、みんな満面の笑みである。
ゲストのアイドルから一通りのお祝いの言葉をもらった後、アナウンサーから全国大会への激励を受けた。
「全国大会は、よりM&Aの本質に近いお題がなされます。ぜひ関東代表として、優勝を目指してください」
そして、アナウンサーは一つの質問をした。
「最後に、東大FAというチーム名の由来を教えていただけますか?」
(そりゃ、M&AなんだからFinancial Advisorからとって東大FAでしょ?いまさら聞かなくてもだれでもわかるでしょ)
ミユキはくすっと笑った。
アナウンサーの質問に対し、マイクを持ったのはフユミだった。
「えーっと、それはですね。チームの女子メンバー二人がFカップとAカップだったのでチーム東大FAと名づけました」
(ええええ!?ちょっと、どういう意味よ?私は聞いてないわよ??)
こうして、チーム東大FAは全国大会へのチケットをゲットした。
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