第4話 予選最終問題は料理対決だ(1)

「予選最終決勝は、4チームによるM&A調理対決だ!!」


メインステージのスクリーンに課題が映し出される。


・料理でM&Aを表現すること

・食材は会場に用意されたものを自由に使ってよい

・制限時間は30分

・審査員は大手証券会社の村野証券のIDB部長、そしてカリスマ料理人の井坂氏


「ねえねえ、どうする?料理だって((((;゚Д゚))))ガクガクブルブル」


フユミの料理苦手意識は半端ない。

リンゴの皮すら剥けないのでそのまま噛り付く娘だ。


トシは答えた。


「まあ、料理の腕というより、M&Aにふさわしい料理ってなんやねん、ってところだろう」


「でも、そもそも料理できなきゃ答えられないじゃん……どうしよう……ん?あれ?そういえば……」


フユミが視線を横にやると、これまで何一つ活躍していないくせにスヤスヤ昼寝している貧乳娘が目に入った。

どうやら第1問でのマラソンの疲れが出ているらしい。


「――あんたね、最終決戦くらいは活躍せぇよ!!」


フユミはミユキを叩き起こした。

寝ぼけ眼のミユキはまだ状況を理解できずにふにゃふにゃしている。


(……いや、ミユキはフユミに騙されて連れてこられたんだよね?)


トシはミユキに同情した。


問答無用でたたき起こされたミユキは、目をこすりながら課題内容を確認した。


そして用意された食材リストにざっと目を通すと、ささっとメモにワインの名前を書き入れた。


「……あのね、だれかこのワインを買ってきてくれる?」

「よっしゃ、俺に任せろ!金は?」

「自腹でお願いね」

「……ょっしゃ、ぉれ、ぃってくりゅ……ー」


トシはしょぼんとしながらも猛ダッシュでどこかにワイン買い出しに走って行った。

その間に、ミユキは会場に用意された台所に立ち、半分寝ぼけたまなざしのまま料理を始めた。


――実はミユキは料理が得意だ。


料理している間に頭がさえてきたのか、鼻歌を歌いながら、徐々にスピードを速めていった。


”ぴっぴー!”


制限時間が終了し、4チームが順に料理を披露することになった。


一番目のチームは丸いカラフルな錠剤形状のチョコを審査員に配った。

「M&A'sチョコです」

ダジャレでM&Aを表現したらしい。


二番目のチームはアクアパッツァを準備した。大きな鯛の口の前に鰯が並んでいる。

「鯛が鰯を買収するところを表現しました」

買収というより、単なる補食に思える表現だ。


三番目のチームは、チーム東大FAとしてはライバル校の一つ、二ツ橋大学のチームだった。

料理が得意なのだろう。とても豪華なステーキ料理を披露した。


「M&Aが成功したら盛大な打ち上げが行われますので、それをイメージしました。

 成功を祝う料理をお楽しみください」


珍しくケイスケが相手チームに興味を持ったようだ。


「やるな。二ツ橋。

 審査員に料理人の井坂氏がいることを意識した高級料理路線だな」


フユミは不安げに聞いた。


「うちは……ミユキは勝てるのか?」


ケイスケは無言でめちゃくちゃ微妙な表情を浮かべた。


そして、ついにチーム東大FAの出番が来た。

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