第3話 第二問はアイドル登場?
第二問は、正解したら勝ち抜けの早押しクイズ。
どうやらスペシャルゲストが来て問題を出すらしい。
出題時間が近づき、会場に緊張感が戻り徐々に静かになっていく。
そして――スペシャルゲストが登場した!
「こんにちわー!
みんな、がんばってるね♬
そんなみんなには、もえもえたんからドっキューンな
ご褒美クイズをプレゼントしちゃうからね♫きゅんきゅん♡」
…………ローカルアイドルグループ「やぶさか89」、マニアックなアイドルだ。
もし超ド級アイドルグループ「まっ坂30」が出てきたのであれば、会場は最高潮に達していたのだろう。
しかし、いわゆるオタクしか知りえないアイドルの突然の登場に動揺を隠せない出場者たち……会場がきょとんとなるのも無理はない。
――そんな中、一人だけ眼鏡の奥の瞳の輝きが100倍UPした男がいた。
大学が終わると歩いてアキバに通うモグリオタク、ケイスケだ。
普段のクールな表情は一変して、満面の笑み。
でもその目線はレーザービームが発射しそうなほど鋭くとがっていた。
「第二問いっきますよー?
えーっとぉ、M&Aで買収する場合、売り手が考える対象会社の価値と買い手が考える価値は、どのような違いがあるでしょう……」
”ビンコーン”
あまりにも早いタイミングで会場はシーンと静まり返った。
一人の男が、ゆっくりとステージの中央に近づいて行った。
この会場で唯一、ローカルアイドル登場で集中力が極限まで高った男、ケイスケだ。
ステージ中央でマイクを受けると、場の雰囲気など一切気にせず一気にロジカルに答えた。
「買い手には買収によって対象会社との相乗効果、つまりシナジーが発生する。
すなわち売り手が考えるより高い価値を認めることができる。
もちろん売り手にその分高めの価格を提示できる。
売り手も買い手も対象会社もすべてがWin-Win-Winの関係になれる。
これがM&Aの必勝パターンであり、シナジーが最重要だといわれる所以である」
(……あのう、ケイスケ?最初の2行で十分だよぉ?話が長すぎてアイドルさん困ってるよ?)
ミユキは苦笑いした。
とはいえ、もちろん正解である。徐々に会場に拍手が沸き起こった。
ケイスケはちゃっかりアイドルと握手を交わし最高の笑みを浮かべていた。
こうして予選第二戦を圧倒的トップで通過したチーム東大FAは、予選最終決勝会場に向かった。
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