第7記:開化丼

 寝室兼居室に戻り、熱いやつを飲みながら、本を読んだ。ケイブンシャの『湖・沼づり大百科』である。昭和60年6月10日発行。中野の古書店で買ったもの。値段は忘れた。忘れたが、数百円程度だったと思う。釣り方といっしょに「食べ方」も載っているのが、本書の特徴である。

 例えば、ブラックバス。バスは、バター焼き、ムニエル、フライなどに向いた食材らしい。バス料理を一度口にすると「とりこになっちゃうぞ」なんて、書いてある。俺は食べたことがないので、とりこになったこともない。


 日本におけるバス・フィッシングの歴史は、なんと、大正14年に遡るそうだ。赤星鉄馬(このお名前は本名?まさか、芸名じゃないよね)という釣りキチさんが、芦ノ湖に放流したのが、全ての幕開けとなった。

 砂利の頃、ルアーでバスを狙ったが、釣果はゼロだった。俺がまともに釣った魚と云えば、ブルーギルぐらいである。未だに愛着を感じてますね、ギルには。特撮番組の敵役みたいな名前も面白い。因みにギルは南蛮漬けにすると、パパの酒の酒肴(さかな)にもってこい…だそうです。本当かねえ。


♞1月27日の日記の一部。黒バスと青ギル。自作に登場させてみたい。無論、悪役として。


 シャットダウン確認後、晩酌の支度を始めた。ラジオを聴きながら、ブラックニッカの白湯割りを呑んだ。今宵の酒肴は、肉じゃが、蓮根のきんぴら、マカロニサラダなど。近所の惣菜屋さんで買ったもの。


 翌朝。布団を出て、台所に行き、湯を沸かした。沸き立ての湯で、即席コーヒーを淹れた。昨夜コンビニで買った「キャラメルビスケットパイ」なるものを食べながら、熱いやつを飲んだ。

 食後、愛機を動かし、名称の応募フォームを呼び出した。お米である。続いて、エレベーターの愛称を(メールで)応募した。ダウン確認後、1週間分の衣類を担いで、近所のコインランドリーへ向かった。お客はゼロだったが、掃除のおばさんが大活動を繰り広げていた。


 帰宅後、露台に脱水ものを吊るした。残りのスペースは毛布と布団で埋めた。その後、近所の食堂に行き、開化丼(他人丼)を頼んだ。南瓜の煮物と白菜の漬物と豆腐の味噌汁が添えられていた。

 ぞぞぞ。ぞぞぞぞ。ずぞぞぞぞぞ。常連の一人であろうか。向かいの卓席のおっちゃんが、物凄い音を立てながら饂飩を啜っていた。


♞1月28日の日記の一部。

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