第6記:素浪人

 食後、寝室兼居室に戻り、愛機を起動させた。ぴよぶっく…ではなくて、チェス3を呼び出した。レベル54(レーティング1678)と対戦した。激しい斬り合いになった。

 気がつくと、盤面に残っている駒は、白キングと黒キングの二つになっていた。他の駒は、全部消え去った。

 画面に「デッドポジション」が表示された。ドロー(引き分け)である。引き分けだが、レーティングが1053に上がった。レベル22(らしい)俺としては、善戦(健闘かな)した方だろう。


 シャットダウン確認後、近所のコインランドリーへ行った。ガラガラに空いていた。自宅に戻り、バルコニーの物干し台に脱水ものを吊るした。今日は風が強い。吹き飛ばされないように注意しなくてはならない。

 その後、再び外出した。家から10分ほど歩いたところにある蕎麦屋兼食堂の暖簾をくぐった。カレー丼を注文した。丼も美味しかったが、添えられていた3品(肉じゃが・豆腐の味噌汁・白菜と胡瓜の漬物)も旨かった。これで、税込み600円なのだから、まことにお値打ちである。帰路の途中、コンビニに寄り、食べものと飲みものを買った。


♞1月21日の日記の一部。たぬき丼も美味しい。


 居室に戻り、円盤再生機の中に『盤嶽の一生』の1枚目を滑り込ませた。主演役所広司、監督市川崑のテレビ時代劇。第1話「わが愛刀よ」と第2話「絵図面の謎」が収録されていた。どちらも悪くない出来だが、個人的には、第2話の方が面白かった。研ぎ師役の上條恒彦が良かった。


 翌日(つまり、今日)の朝が来た。布団を出て、洗面所に行き、冷たい水で顔を洗った。洗ってから、身支度を整えた。室内に干してある脱水ものを、露台に移した。残りの空間を、寝具で埋めた。それから、外出した。左の手首にはめた時計が「午前9時」を示していた。

 貸し円盤屋を目指した。着くまで、30分程度かかる。歩きながら、ダサクの文案を練った。途中、喫茶店に寄った。初めて入る店である。

 店内は、流行っている店特有の雰囲気に満たされていた。案内された席に座り、メニューを眺めた。店員のお姉さんに「小倉トーストセット」を注文した。トースト、コーヒー、サラダ、ゆで卵、スープなどが運ばれてきた。旨かった。久し振りに「まともなモーニング」を食べた気がする。


♞1月22日の日記の一部。小倉トーストが好きな男である。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る