第3記:寒気

 眼が覚めた。今朝は寒かった。冷気が装甲(布団と毛布と衣服)を貫いて、体に迫ってくる。今冬一番の冷え込みではあるまいか……。

 こう寒いと、布団から出るのが億劫になる。出たくない。ずっとこうしていたい。とは云うものの、今日中に済ませておきたい雑用が幾つかある。先ず洗濯だ。明日は天気が崩れるそうだから、今日やるしかない。雨の日に洗濯などできない。俺はありったけの精神力を動員して、布団を出た。


 近所のコインランドリーに行き、担いできたものを、洗濯マシーンの中に放り込んだ。粉末洗剤(除菌効果があるらしい)を振りかけた後、蓋を閉め、指定の金額(500円)を投入した。

 快速モードを選び、始動ボタンを押した。これが、2017年の「初洗い」になる。俺は洗濯そのものは好きである。洗いも干しも大好きだ。ただ、運びが面倒なのである。自宅とランドリーの往復がイヤなのである。

 帰宅後、脱水衣類を、バルコニーの物干し台に全て吊るした。それから、ペットボトルの始末を始めた。蓋を取り、外装ラベルを剥す。剥してから、ひとつひとつ踏み潰す。

 これも面倒だが、油断をすると、部屋がボトルで埋まってしまう。ためると余計に面倒だ。本数が少ない内に潰せば、そんなに手間はかからない。


♞1月7日の日記の一部。脱水衣類は結構重たい。ボトル潰しは案外好きな作業である。


 眼が覚めた。枕辺のアナログ時計が「朝の8時」を示していた。布団を出て、身支度を整えた。カーテンを開けて、外の様子を窺った。窓ガラスの向こうに曇天が広がっていた。俺は戸締りを始めた。

 最後の施錠を終わらせた俺は、自宅を離れて、近所の神社を目指した。境内に人影はなかった。参拝後、役場方向に向かって歩いた。幾度もお巡りさんと擦れ違う。事件や捕物ではない。何か大きなイベントがあるようだ。俺は横断歩道を渡り、目的のレストランに入った。

 同店を訪れるのは久し振りである。しばらく来ない内に「ママゴト化」が進んだらしい。冗談みたいな朝食を食べながら、頭の中で「このレストランに来ることは二度とあるまい……」と、考えていた。

 食後、セルフサービスのコーヒーを飲んだ。吃驚するほど不味かった。俺が淹れるコーヒーより不味いとは!冗談は飯だけではなかったのである。


♞1月8日の日記の一部。まともな朝食を食べさせるレストランはないものか。

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