4.そして新たなる萌えへ……

「いやー良いライブだったな」

「最後のはどうかと思うけどね。声ガラガラじゃない」

 スミレはそう言いつつ嬉しそうだ。

「トラプリがなくなったら、僕は明日から何を生きがいにして生きていけばいいんだ……」

 ライブ中は興奮して忘れていたが、あれがラストライブだったのだ。

 明日からトラプリは、この世界にいない。

 その現実が、僕に重くのしかかる。

「もう、そんなに落ち込まないの……」

 スミレが慰めようとしてくれる。色々常識ずれてるところもあったが、基本的には良い子なんだ。

 落ち込んだ僕の心にスミレの優しさが染みていく。

 あまり女の子に慰められ続けるのどうかと思って、頑張って話題を変えることにした。

「……そういえば、魔獣はどうなったんだ?」

「根源の呪いが消えたから、魔獣も消えたわ」

「と言うことは、オタクたちは元に戻ったのか?」

「いいえ、残念ながら喰われた心は魔獣が居なくなっても元に戻らないわ」

「そんな……」

 もう、この街はオタクの街じゃなくなってしまうのか。

「でも、また”萌え”が無くなったわけじゃない」

 そう言って、その控えめな胸を自分で指しながらスミレ続ける。

「だって、私たちがここにいるから」

「……どう言うことだ?」

 スミレは自信満々に、「いいこと言った」みたいな顔をしているが、全くわからない。

「最後まで締まらないわね……」

 僕が察することができなかったので、スミレは呆れ顔だ。

「私たちは”萌え”そのものなの。私たちがいると言うことは、”萌え”がなくなったわけじゃないの。だから……」

 スミレは僕を見据えると、ビシィと僕の顔に指をさし、

「また、みんなが新しい”萌え”を見つければいいだけなのよ!」

 その一言に、僕もハッとした。

 そうだ。トラプリは解散したが、世界にはまだたくさんのアイドル達がいる。

 終わりはまた新しい始まりの合図なのだ。

 たとえ今まで感じていた”萌え”が世界からなくなったとしても、また新しい”萌え”を見つければいいだけのことだ!

「ありがとうスミレ、僕も今、気付かされたよ」

「どういたしまして」

 そう言って、僕を指さしたままウインクをするスミレは、とても可愛かった。

「スミレたん……萌え」

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アキバスマイル! -オタクが日帰りで秋葉原を救ってくる話- タトネ @Tatone_

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