第9話
あれからまた少しの時間が過ぎ、俺と雨野、田中、そして有笠の仲は深まりいつしかこうして屋上で一緒に昼飯を食べる程になっていた。
「あっづいぃ~…」
「おい、溶けるな溶けるな」
俺は田中に言うも、確かに暑さは感じていた。
まだ6月になったばかりなのにこの暑さはまさに異常だ。
俺は首筋を伝う汗を拭いながら思う。
「こうも暑いと、プールにでも行きたくなりますね」
「そうだね。もうすっかり夏みたい」
「これじゃあ熱中症で倒れる人が出るぞ」
俺たちのテスト勉強も一段落付いた。
今ではもう俺はあまり有笠に頼る事もなくなったので、今では雨野と有笠の二人体制で田中の面倒を見る形になっている。
「プールかあ―――おし、それじゃあ夏休みになったらみんなで色々しようぜ」
「いいねえ! 夏祭りに花火大会、海水浴に登山、夏休みには楽し事が盛りだくさん!」
夏休みという単語を聞いた瞬間、ゲル状になっていた田中が復活した。
やれやれ、ホントにこいつは遊ぶこととなると目が無いんだから。
そこで俺は、ふとある事を疑問に持った。
「そうだ、雨野たちは有笠の連絡先知ってるんだっけ?」
「「「あ……」」」
3人の声が重なる。
俺は前に有笠の連絡先を知っているが、雨野と田中が交換したのは見たことが無かったからもしかしてと思ったが、まさか本当に知らなかったとは……。
「じゃあ、今交換しようよ。ねえ美由ちゃん、LAIN教えてー」
「有笠さん。私も教えてもらってもいいですか? もちろん嫌でなければですが」
「全然嫌なんてことないよ…! ありがとう雨野さん、田中くん」
俺は有笠たちのLAIN交換を見守った。
「それから田中くん? きみは夏休みの話をするよりも先にまずはこの中間テスト、それからすぐにある期末テストを乗り越えてから話しなさい」
「うへぇ…、委員長ってばすぐに嫌な話するんだから~。もっと明るい話しようぜ」
「大事な話をしてるんです!」
テストの話をされ、再び溶けそうになる田中とそれを叱る雨野を見守りながら俺たちは笑っていた。
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「え、俺がですか?」
「そうなの。今日当番のはずだった子が熱を出しちゃったから、代わりにウサギたちの餌やり、お願いできる?」
放課後に担任である
その用件は、飼育係たちが順番に餌やりや掃除を担当しているウサギ小屋に餌を届けてほしいとの事だった。
「ああ、確かに来てませんでしたね」
「そう、親御さんから聞いた話だと、急な気温の変化で体調を崩しちゃったみたいで」
まあ、確かに俺たちもそんな話してたしな。
熱中症じゃないとはいえ、こんな近くに事例がいるとは。
意外と世界は狭いものだ。
「まあ、それくらいなら別にいいですよ」
というやり取りを挟んだので、俺はこうしてウサギ小屋にいる。
「美味いか?」
俺の問いかけを無視してウサギたちは必死に食べ進める。
まあ、たまにはこういう日も悪くないって事で、今日はあの二人にじっくり田中を指導してもらおう。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
一方そのころ―――。
「ちょっと休憩~」
「駄目だよ田中くん。今日は出雲くんがいないんだから、私たちがしっかりしないと!」
「そうですよ。今日はいつも以上に厳しくします!」
「ひええ~…、優也ぁ、早く来てくれーっ!」
田中は女子二人からみっちり指導されているのでした。
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