閑話

 私はどうしてこの世界に来たのだろう。

 あの日彼をこの世界に送り返し、私自身も続けてこの世界に来てからというもの、こんな事を考えるのが私の日課になっている様な気がする。


 もしかしたら、彼の選択が珍しかったからなのかもしれない。

 今まで私は多くの人間の死を見て、また多くの人間に選択を与えてきた。

 その多くは、当然の事ながら異世界への転生を選ぶ。

 理由は簡単だ、その死んだ人間の多くは、元々いた現世に戻りたくないからである。

 いじめ、仕事、家族関係によるストレス、人間である以上いずれは抱えなくてはならないもの抱えたまま現世を去った彼らにとってチート持ったままの転生はまさに夢の様な出来事なのだろう。


 もちろん、それだけではなく彼の様に現世に帰る事を望む者もいた。

 こちらの世界にあるテレビ番組で死後の世界を見たことがある者などの多くがソレに該当する。

 当然ながら、こちらはあまり無い稀有けうな例ではあるが、ともあれ前例を見てきた私としては彼の選択そのものは特別珍しく感じる事はなかった。


 ―――しかし、まさかこの私に求婚してきた事は予想外という他ない。

 これは流石に前例がなかったので、私としても驚いた。

 これまでにも私はこの姿で数多くの人間の前に現れたが、それでも彼の様に私に求婚してきた人間などいなかった。


 いや、だからこそなのだろうか。

 人間は何をして恋をし、またその者と結ばれるのか。

 悠久の時を生きる事が出来た私が、それを捨ててまでこの世界に来たのはそれを知りたかったからなのかも知れない。


 まあ、そんな事は置いておき。


「辛いぃ~…」


「おかしいわね。これ甘口なのよ、日和」


 このカレーというものは、どうやらとても辛い食べ物らしい。

 


 

 


 



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