B-3「第2ミッション SKP VS スナイパー集団①」
暗闇の中を落ちていった俺たちは地面にぶつかった。ただその地面は柔らかく、しかも傾斜が付いていた。コロコロ転がっていき、小さなトンネルを潜っていく。
遂にはトンネルを抜け、灯りのある部屋にたどり着いた。
「イテテテテテテ…」
腹の痛みを感じながらもゆっくりと腰を上げると、目の前には銃が置いてある。
「薫? 渉?」
辺りを見回す。2人ともいない。3人バラバラになったということか。
『さあ、第二ミッション!』
無慈悲なおばさん声が鳴り響く。
『お前たちには我々の腕利きのスナイパーたちと戦ってもらうよ』
「スナイパー?」
『さあその銃を持って廊下に出な! 最後の一人になるまで殺しきるんだよ! ま、生き残るのはうちのスナイパーたちだけどね』
オーホッホッホとまたしても高笑いをした。腹が立つ笑い方だ。痛い目に合わせてやりたい。ただ銃はあるとはいえプロのスナイパーたちと戦えなんて無茶だ。確実に撃ち殺されるんじゃないか?
ふと薫の顔が浮かんだ。彼女ならうまくやるだろう。そういう戦闘訓練を受けているのだから……。
『スタート!』
合図とともに天井が下がってきた。急いで銃を取って廊下に出た。さっきと違い暗闇では無いものの、少し薄暗い。コンクリートの無機質な空間が続く。
前と後ろを交互に見ながら考える。
渉ならどうだろう。 なんだかんだ上手く生き延びそうだ。
壁に穴が開いている。俺の部屋のあのタイプの穴じゃなくて、人工的に真四角にきりととられている。中は部屋のようになっていて、ベンチやロッカー、観葉植物などが置いてある。
もしかしてこのロッカーって……。ほうきを入れるような感じの縦長のロッカーの中には何もなく、ちょうど自分が入れそうなサイズだった。入って扉を閉めた。思わず嬉しくなった、完璧だ。ここにいれば誰にもばれない。おそらく監視カメラはついていなかった。首のリングが乗っ取られていたら別だけど。壁にもたれかかって座り込んだ。
……。
で、どうするんだ? もうあの教授も、薫も、渉もいないんだぞ? このままやり過ごせるのか? 結局見つかるんじゃないか? 見つからなかったら逆にどうなんだ? 食料は? 水は? 餓死するだけじゃないか?
しばらく耳を澄ましてみる。自分の荒い吐息だけが聞こえる。自分はここにいていいのか……?
足が震えた。いや、これはスマホだ。奴らはスマホを奪っていなかったのか。画面を見ると「三上充」の文字があった。
このタイミングで? 何でこの人? アームストロングに追い詰められたときはすでに夕日が差していたから、おそらく今はだいぶ夜だ。実際眠いし。こんな夜に何だ……?
『どこにいる?』
と書かれたメッセージが来ている。
「え?」
うわ、どうしようこんな時に。いやでもこれは救けを呼ぶチャンスだ。いや待てよ、この人デスゲーマーを捕まえようとしているんだよな……。いやでも、いやでも……。しばらく画面を行ったり来たりした。
今絶対絶命だ。そんなこと言ってられない。送ろう。文字を打って送信しようとしたが、送信できない。見ると圏外だ。当たり前だ、ここは地下なのだから。ということはこれは地下にぶち込まれる前に送られてきているということ……?
どういうことかわからない、けどチャンスが目の前に降りてきているというのは事実だ。
ロッカーの扉を開けようとする。足音が聞こえて途端に扉を閉める。
「ハアッ、ハアッ、まったくよ。あのガキが全然現れねえもんな」
「ちょっとここで休もう」
二人いるみたいだ。どちらもスナイパーだろう。ロッカーのそばにあるベンチに座ったようだ。
「命令通りとっととやろうとしても出てこないなんて卑怯だ。なんなら捕まえたときにぶち殺してやったらよかったんだ」
「拷問にかけた方がよかったんじゃねえか」
アハハハと野太い笑い声が聞こえた。拷問と聞いて背筋がゾクっとする。卑怯という言葉も引っかかった。
「他はどうしてるんだろナ」
「さあな。わかんねえ、無線機で呼びかけてみっか」
「スマホが使えたらいいのにな」
「こんな地下でスマホが使えるわけねえだろ。使えるのは上層部くらいだろ」
「何層あるんだよ、ここ。いくらなんでも広すぎるだろ。掘りすぎだし、金かかりすぎだし。変なギミックもいれてるし」
「こないだ点検してたやつが間違って針山に落ちて死んだんだってさ。変にデスゲーマーのマネするからこうなるんだよ」
「そだな」
「もしもし」
「なんだ?」
「お前にいってねえよ。無線に言ってんだよ」
「すまん、すまん」
「うい、こちらNo2、そっちの様子はどうだ?」
耳を澄まして見るが、向こうの音声は流石に聞こえない。
「おお、そうかそうか」
「どうだ?」
相棒の方も聞きたがっているようで、トランシーバーを奪おうとする音が聞こえる。
「ちょっと待て。ああ、おおおお」
「聞かせろよ」
「隣の奴がうるさくて、おい! 黙れ」
「聞かせてくれよ」
「おお、もうちょっとで殺せそうか」
え? 誰が…? 胸が張り詰める。まさか、そんなことは。
「俺にも喋らせろ!」
殴る音がした。
「な、な 何すんだテメェ!」
トランシーバーが落ちる音がして、また殴る音がした。
「それを俺に貸せって言ってんだよ」
「後で伝えるから別にいいだろ」
「今話してるのNo1だろ! ってことはアイツがいるじゃねえか」
「アイツってお前……」
「そんなんじゃねえけどよ」
「そんなんだろ? お前、アイツのこと好きなんだろ?」
え? 何この展開。
「お前もじゃねえかよ」
「渡さねえからな!」
「なんでもう手に入れた気になってんだよ!」
この界隈でそういうことあるんだ……。それに結構な取っ組み合いになってるみたいだ。自分が持っている銃の感触を確かめる。これはデスゲームだ、今2人はきっと戦ってる。負けかけてもいる。自分だけここにいるわけにはいかない!
ゆっくりと扉を開けていく。隙間から様子を伺う。スナイパーだというのに床に転がって取っ組み合いをしている。こいつらがかおりを殺しているかもしれないんだ。ここは、生きるためだ。許してくれ。
出発前、薫に教えてもらった通り、銃を構え、片方の男に狙いを定めた。
引き金を引いた瞬間、手にものすごい振動が加わって男が倒れた。
「あ、なんだ?」
もう片方の男がこちらを向いた瞬間、もう一発男の腹に向かって撃った。男は倒れた。
あっけなかった。目の前には静寂と、さっきまで動いていた筋肉の塊2つだけがあった。引きつけられてしまいそうになる異質な光景。慌てて目をそらす。
俺は廊下へと走り出した。
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