七
次の日とその次の日は、具合を悪くしたので、夜はおろか学校も休んだ。彼女のことはとても気になったし、一人で過ごさせてしまうのは申し訳なかったが、体を起こすのもやっとで、とうてい足を運べそうになかったのだ。
しかし、ふと思った。私はこんなにも誰かのことを考えたことはあっただろうか。考えることといえば自分の事ばかりだった。将来何の仕事に就きたくて、そのためにはどの大学のどの学部に入ればいいのか。その大学に行くためにはこの科目を頑張って勉強しなきゃ。僕が考えていることと言えば、常にそんなようなことだ。自分以外の人のことを考えるのは、人生で初めてだろう。あの、名前も知らない、たった三日の夜だけ一緒にいたあの彼女のことを考えている。僕にはただただ不思議だった。そして、会いに行けなかったことを申し訳なく思った。
次の日の夜、僕は久しぶりにそこへ向かった。学校からの課題に追われ、着いたのは0時を回ってからだった。
二日間、そこへ行けなかった後ろめたさと、今日そこに行っても彼女はいないんじゃないかという不安を背負っていた。今書いていて気付いたが、いつの間にかそこへ行く目的が彼女に会うため、になっていた。
そこには、彼女の姿はなかった。まあそうだよな、と思いつつ、草の上に座って星を眺めた。少しずつだが季節は巡っているもので、同じ時間でも見える星は変わってきている。カシオペヤやペルセウスが少し高い位置で見えるようになっていた。僕はなんだかよくわからない気持ちになっていた。すべてを忘れさせてくれるあの夜空を見ているというのに、どこか落ち着かない。やるせない気持ちになって、今にも涙が出そうだ。なぜだろう。そう考えていると、草の上に何か光るものが置いてあるのを見つけた。ライトだろうか。僕は光の方へ向かった。
そこには案の定、百均で売っているような小さなライトが置いてあった。それを拾うと、その下に紙のようなものがあった。拾ってみると封になっていて、そこには「星が好きなあの子へ」と書いてあった。自分に宛てられたものだと察して、嫌な予感がした。僕は急いで立ち上がり、街灯がある近くの道まで走った。
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