音だけではない。夜の世界には、いろいろなものが見える。風が肌を流れる感触ひとつとっても、昼間とは違うものである。冷たい風が細い息で僕の腕や頬、脚をくすぐるのだ。そういう風のことを夜風というが、「よ」という響きが一つ加わるだけで、なんだか優しく穏やかな印象に様変わりしてしまう。夜風もまた、夜を夜にしてしまうものである。


 僕は星も好きだった。漆黒の中、光り輝く無数の光点。米粒よりも小さいそれは、何百万という大きさをしており、そこでは生命が息をするかのように絶えず核融合が行われているのである。そんなことを考えながら草の上に横になり、この恐ろしく広大な天を眺めていると、今日まで起こってきたあらゆる喜び、哀しみ、怒り、嫉妬、歓喜、さらにはこれからへの希望、失意、そのすべてがどうでもよく小さなものだと感じてくる。そんな時、私は決まって音楽を聴くのである。ポケットに常に忍ばせているどこで買ったかも覚えていないイヤホンを取り出し、耳に挿す。夜の音がよいと言った後にこの話をするのはいささか恐縮ではあるが、何百の星を見ながら曲を聴くというのもそれはそれで良い。そもそも、夜という時間は、闇が守ってくれているから、何をするのも自由なのである。僕が聴く曲と言えば、Re:PerCussiOnやarneといったインディーズバンドばかりであった。

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