二
夏、丑三つ時に外に出たとき、僕は様々なものを感じる。例えば、夏であると、僕の宅の周囲の田はほとんど水を蓄えてあるから、蛙の鳴き声が耳に飛び込んでくる。周囲にある何十という田から、何千何万、ひょっとすると何億という蛙が一斉に鳴くもので、蛙の合唱というよりは大歓声であるなと感じた。その声援は頭が割れるほどやかましいが、昼間は人間がこの場で好き勝手暮らしているのだ、それらが寝静まった夜くらいは、蛙たちの好きにしてやってもよいなと思うものである。
耳に入るものは蛙だけではない。川のせせらぎも夜では変わって聞こえるものだ。川のそばまで行くと、水が水路を活気良く流れるその息吹が聞こえるだろう。太陽がないせいで、その輪郭をぼんやりとしかとらえられないからか。はたまた、日中五月蠅いミンミンやら何やらというセミの声がしないからか。とにかく涼やかなそれが、耳に入り、ダイレクトに心に響く。そんな気がするのである。
そうしていると、僕は様々な音に囲まれていることを知る。草を這う虫やら小動物やら。電柱に張り付いている蛍光灯の耳鳴り。草を踏み分け進む私の足音。夜の世界は、太陽や青空は聞くことができない音であふれているのだ。
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