夜とたくあん

音藝堂

僕は、夜が好きだ。日が沈み、空が黒に限りなく近い紺に染まる。空気、水、大地、周りにあるものすべてがその紺と同化する。僕は、田畑が町を覆いつくすような田舎で生まれ育った。夜になると街明かりなどは一つもなく、それはまた大層な闇につつまれるのであった。視覚が閉ざされた世界では、様々な感覚が敏感になる。


 このくだらないお喋りを読んでくれている諸君らはおそらく僕と同じ感性を持っているのだろう。とまではいわないが、おそらく僕の思想に何らかの興味を持っているのだと思う。ならばぜひ、読者も辺境やそこらに出かけた際は、夜に外をぶらぶらしてみて欲しい。

 二〇時、二一時の皆が宅で団欒している時間もよいが、二五時や二六時の景色は格別である。視覚が制限された中で「景色」というのは少々おかしなことではあるが、景色とは視覚ではなくこころで受容するものなのでよしとしよう。とにかく、夜は、僕に様々なことを教えてくれる経典であり、夜こそが僕の居場所なのではないかと思うこともある。

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