第31話ー刹那の獅子は動かないー
「──こりゃぁ失礼──クスクス──僕の名前は精霊ジン。みんなの知っての通り大精霊の一角さ! よろしくね君達──」
【20000000/0】カロリー200万!?
やはり精霊はエネルギーそのものなのだろう。物質的な要素はないからタンパク質量は0なのか……、カロリー=エネルギー。
「エレインです。願いを叶える試練を受けに来ました」
「あ、あのシャルロットです」シャルロットは深くお辞儀した。。
「メイメイアル、よろしくな!」
「──君は──リヴァイアサン──いや──今は、メイメイという名前なのね……きっと記憶はないのだろうけども……、精霊転生か……、なんだか寂しいよ、僕は試した事がないのだけど、そんな感じなのかぁ〜」
「メイメイはメイメイある。他の誰だろうとメイメイはメイメイある」
「うわぁ〜リヴァイアサンっぽいな〜そういうところ……」
ソロモンが言っていた精霊天使。どうやら会話からしてメイメイはリヴァイアサンが精霊転生したらしい──。そして知り合いだったみたいだ……。
「──それで僕たちは試練を受けに来たのだけど──」
「そうだったね。う──ん──。なんせリヴァイアサンがいるからね。あまり簡単な試練でもつまらないなぁ……どうしようかなぁ〜。僕たち大精霊にとっては娯楽の1つでね」ジンは目を閉じて腕を組み考え込んでいる。
「──早くするアル! デカブツ、でかいのは図体だけで脳みそは──はぶぅ」俺は早急にメイメイの口を塞いだ。
「──おッ! これはこれは! ふむふむ──面白いのがアルスターに来てるね──クスクス──」何やら精霊の力で見通したらしく、ジンは嬉しそうに手を叩き何かいい試練を思いついたようだ。
「偶然か必然か──これはきっと何かの思し召し──。神獣が一匹きてるね……刹那の獅子か……、君達にはこれを倒してきてもらおうかな」
──刹那の獅子──ゴブタが言っていた物理も魔力も効かないとされ、魔王も勇者も避けたとされる無敵の神獣──。
「面白いことに今、これがアルスター大陸の南西部のオアシスにいる。こいつは大変な試練だね〜クスクス──僕の試練はこれだ、やるかい?」
「はっ! メイメイがいるから楽勝ネ! 行くあるよ」
「願いを叶えるにはやるしかない。もちろんやるよ!」
「この神獣は無理難題でもあるからねー、条件はないよ自由におやりよ。ただ刹那の獅子は1ヶ月以上は同じところに滞在はしないらしいから、実質それが期限になるね。さて、リヴァイアサンがいるとしても君達人間にこれが成せるかな……楽しみにしているよ──クスクス──」
「やってやりますとも!」俺はモストマスキュラーのポージングでアピールをしてみせた。
「大した自信じゃないか──その調子で頑張ってくれたまえよ。僕はここで待っているから、倒したらまた此処へおいでね。その時はなんでも叶えてあげよう!」
そうして俺たちは神殿を出てソロモン城へ戻った。
「──困ったわね──」試練の内容をソロモンに伝えると深刻な表情をしていた。
「こんな大きな試練になるなんて思っていなかったわ……貴方、死ぬわよ?」
ソロモン王の深刻ぶりを見ていると、いよいよやばい試練を突きつけられた事を悟った。甘かったのか?
やはりゴブタが言っていた化け物っていうのは本当のようだ。──さて、どうしたものか……。
「エレインちゃん、本当にやるの? 提案したのはあたしだけど、これは別問題よ。引いてもらっても責めないわ……ミノタウロスの件も諦めてあたし達でどうにかするわぁん」
「大丈夫ですよ──やりますよ。これは僕たちの旅の目的でもあるんですよ」
「自信満々なのはいいけど、相手が悪いわ。あたしはオススメしない。あたしでも……、どうにかできる相手じゃないわ。性別を超える以上の問題よ、舐めてると死ぬわよ?」
「あはは──とりあえず対峙してみないとなんとも、僕は神獣を見たことがない。とりあえずやってみないことにはわからないですよ」
「──はぁ──、わかったわ。案内にサイモンちゃん、それからもしもの為に回復ができるようにレザードちゃんをつけるわ。あとはゲイ卓の騎士の1人、ゲイちゃんも行かせましょう……」
「ありがとうございます」
「おいおい──まじですかい!? 兄弟、いざとなったら俺は逃げさせてもらうからな。神獣なんて化け物の相手なんざごめんだぜ。俺なんか即死だよ」サイモンの顔は青ざめている。
「ジュリアン、ゲイちゃんを呼んで来てちょうだい」
「ねぇ──エレインちゃん……行く前に祝福キスをしましょうか?」ジュリアス将軍が迫ってくる。
「い、いえ、大丈夫です。僕は丈夫なので死にませんよ──変わりにサイモン将軍にしてあげて下さい」
「──あっ! 兄弟! てめぇ──!!」
──南西のオアシス──
「──ついたぜ兄弟」キスマークだらけのサイモンが目的地オアシスを指差して言った。
「あら? どこにも神獣なんかいないじゃない」ツインテールと赤のワンピースを風になびかせゲイ将軍は言った。
こうして見るとまじで女の子だなぁ〜。見た目で言ったらとても可愛らしい……、いや、男なのだけど……。
「周囲の魔力を探知しましたが動物達の気配しかありませんね……」レザードは目を閉じて探知魔法で探っている。
「──なんかここに大きな穴がアルネ」メイメイは地面に空いた半径5メートル程の穴を見つけて指を差した。
「ん、どれどれ──おぉ──こりゃ深ぇーな。真下が真っ暗で何も見えないぜ」サイモンが覗き混んでいる。
「じゃあ、見えるとこで見てこいアル」「ひんっ!」メイメイがサイモン将軍のお尻を蹴り飛ばして穴に突き落とした──。「──うああああああ──!」サイモンの叫び声が穴の中を轟く。
「う、嘘でしょー!? サイモンさーん!!」時すでに遅し……。サイモンは闇の中に消えていった。
「ちょ、ちょっと! あんた!? うちのサイモンちゃんに何すんのよ!!」
「──さ、サイモンさぁーん!!」ゲイとレザードがアタフタしている。
『──だ、大丈夫だー! なんとか魔法で着地できたからー!』穴の暗闇からサイモンの返事が聞こえた。
どうやら事なきを得たようだ。しかしメイメイは危険人物すぎる……。
「ぐるゥゥゥゥ──」獣の唸り声が闇の中から聞こえる
「──!?」
「グワァァァァー!」サイモンが落ちた洞窟から獣が飛び出してきた。さっきの騒ぎで寝ていたところ邪魔され飛び起きたようだ。
「──!?」
「神獣!?」
「間違いない、こいつよ!」
「ほんとにいたー!!」
見た目はライオンのようで、その立髪は真っ白だった。頭からツノが生えている──翼が背中に生えていて片方はまるで天使のように白く、もう片方は悪魔のように黒い──四足歩行の両手両足の爪は船のイカリのように大きく、そして鋭い。【1500000/1500000】
「──ひゃく……150万!?」
『ガアアアアア──!!』刹那の獅子は口から火を吐いた。
「──おーい!! ど、どうしたー!?」サイモンはまだ何が起きているかわかっていないらしい──穴の中で叫んでいる。
襲ってくるか!? と思いきや刹那の獅子は俺たちを見てから、くるっと周り木陰に行き寝てしまった。
「あ、あれ? い、今のうちサイモンちゃん助けてくるわね」ゲイ将軍は穴に落ちたサイモンを救助に向かった。
「シャルロットとレザードさんは後方に逃げててくれるかな?」
「何かあったら僕は支援に徹しますね」
「ありがとう、シャルロットをお願いします」
「──エレイン、気をつけてね」2人は少し離れたところへ向かっていった。
(さて──どうしたもんかな……、攻撃をしてこない……もしかして敵として認識するレベルではないと思われたのか?)
「なんか寝てるアルね。メイメイがちょっとぶっ飛ばしてくるアルよ」
「いや、ちょっと様子見だ方が──」メイメイを引き止めようとしたら「──ゴブッ!?」裏拳が飛んできて俺は吹っ飛ばされた。
「エレちゃんはそこで見てるがいいネ」メイメイはスタスタ寝ている神獣の前まで躊躇なく歩いて行った。
「──本当に寝てアルネ……、楽勝ある」ニコッと満面の笑みを浮かべて──、メイメイは大きく両足を開き、片方の拳を前に突き出し、右手を脇腹に正拳突きをするかの様に構えた。
「発ッ!」と一言放った。
周りの空気がビリビリと痺れた錯覚をした。──そういえばメイメイが闘うところ見た事がなかったな……。メイメイの体の周りにはオーラのようなモノがまとわりついていた。
あ……あれ? なんかすごく大きく見える!? 目の錯覚なのは間違いないのだが、メイメイが山のように大きく見えた。
『──覇王昇天撃!!』力を溜め込んだ右の正拳が凄まじい覇気とともの神獣の頭に撃ち込まれた。
一瞬大地が揺れ、衝撃波が走りに抜けていく。神獣が休んでいた後ろにあった木と岩が跡形もなく消し飛んだ──。
「ヒュ〜」とその光景を見たサイモンが口笛を鳴らす。ゲイ将軍による救出は終わったようだ。
しかし──神獣は何事もなくそのまま寝ていた。
「おいおい、まじかよ──!?」
「ビクリともしないじゃない!?」
サイモンとゲイ将軍が驚いていた。メイメイは鼻くそをほじりながらそのままスタスタこちらに帰ってきた。
「今日は調子が悪いアル。エレちゃんに後は任せたネ。選手交代アル──」そう言って俺の腰に鼻くそをなびり、そのままシャルロットの元へ歩いて行った。
とてつもない耐久力、おまけに余裕で寝ている──。
誰が見てもメイメイの必殺技は一撃必殺の技だった、それが微動だにしない。
「一度、引き上げて考えましょう」ゲイ将軍がそう提案する。
「──いえ、やってみますよ」俺は神獣に向かって突撃した。殴って蹴って連打したが微動だにせず寝ている……。
──なら、これはどうだ!
『デンプシーロール!!』デュラハン戦で使ったデンプシーロールを炸裂させた!!
神獣は大きくアクビをして蚊を払うかのように手を振った。腕に激痛が走った──血が噴水の様に噴き出た。
「──え!?」ボトっと足元に腕が落ちていた。誰の?
『エレイン!?』
『エレちゃん!?』
『兄弟!?』
皆が慌ただしく俺の名前を叫ぶ。凄い戦慄を感じた。
俺は自分の右腕を見た──肘から下がなくなっていて、そこから血が吹き出していた──あぁ──痛ッ──これは、俺の腕だったのか──。
『うわあああああああああ──ッ!!?』俺はのたうち回った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます