第30話ー大精霊ジンー





 「──それでね、あたしからのお願いはミノタウロス退治を貴方達にお願いしたいの──もちろん、ただとは言わないわ──」


 ソロモン王は真顔で本題を切り出した。そして、そのまま話を続けた。


「あたしから出せる条件は、まずこの国で叶えられる事ならなんでも1つ叶えてあげる、大金でも、ハーレムでも(おかまの)なんでもよん! それともう1つは──シャルロットちゃんの魔力──」


「──!?」


「勘違いしないでねん。あたしがシャルロットちゃんの魔力を引き出す訳じゃないのだけど……シャルロットちゃんの魔力を引き出せる可能性があるわよ!」


「それはまじですか!?」


「この宮殿の裏に大きな山があったわよね? あの頂上にあたしの神殿──、ソロモン神殿があるのだわ。そこには大精霊ジンちゃんが住んでいるの、つまりジンちゃんと取引きをすれば魔力を引き出す事は可能よ! 大精霊ですものどんな願いも叶えるわ」

 

 俺はステラ王子の契約について思い出していた。その条件ではシャルロットの魂と肉体が──。


「──いえ、エレインちゃんが思ってる事にはならないわよ──」


(──心を読んだ!?)


「精霊との取引条件は2つあるのよ。1つはあなたが知ってる通り自身を生贄として願いを叶えるスタイル。そしてもう1つは──、精霊が気分で出した試練を乗り越えて取引をするスタイル」


「試練を乗り越える……」


「えぇ、精霊が試練を与えてそれを乗り越えれば願いが叶えてもらえるわ。ただし、気分によるの……、その場で簡単に終わっちゃうような試練もあれば、とても果たせそうにない試練もあるの──。

「こればかりは運よねぇ〜。

「とてつもなく大きな試練だと思ってちょうだい。ただ──、あたしの未来視では内容は知らないのだけど、それを乗り越えるあなた達のビジョンが見えたわ。

「だけどさっきも言った通り、メイメイちゃんの存在は予言にはなかったの──つまり未来は変わり初めていて……別のビジョンに向かっているのかもしれないわ。

「──あたしから出せる条件その2は、ソロモン神殿の解放よーん」


 俺はシャルロットの顔を見た。旅の目的の1つでもあるシャルロットの魔力を引き出す事……、こんな条件は願ってもない事だ。

 この先、大精霊に逢えるかは本当にわからない……これを逃したらチャンスは2度とこないかもしれない。

 マッスル信条その1、チャンスは逃すな! 飛びつけ! だ。


「し・か・も・よ──迷宮城の攻略前に──つまり先にこのソロモン神殿を解放するわよ? うまく行ってからあたしの願いを後回しにしていいのよ? もう! エレインちゃんったら罪深いわぁ〜ん。あたしは2番目の女でいいわよん」


「エレインちゃんは罪深い〜そしてオネェ様は毛が深い〜」ジュリアス将軍が歌う。

 

「オーホッホッホッ! おだまりなさいジュリアン!」


 ──なるほど、こんないい条件はない。どんな試練がくるのかわからかいが……やってやるさ!


「わかりました! やりましょう!」


「そう言ってくれると思ったわん! んもう、キスしちゃう!」広げたセンスを閉じて嬉しそうにソロモン王は近づいてきた。


「け、結構です! いや、やめて下さい!」


「んもう〜」ソロモン王は、少しいじけた。


「オネェ様、そうと決まればまずはお食事にしましょう!」


「そうね! 72人の将軍に合わせるのは色々とお仕事があって無理だから──代表者の10の将軍【ゲイ卓の騎士】を集めてお食事にしましょう──サイモンちゃん!」


「はぁ──、はいはい……、嫌だなぁ〜ゲイ卓に会うのは……」そう言ってサイモンは深いため息をついてトボトボと王の間を出て行った。




 ──夕食──

 俺たちは食卓の間に通された。そこには長いテーブルがあり上座にはソロモン王の椅子と一目瞭然でわかる真ッピンクのハート型の椅子があり、ジュリアス将軍を初めとする、それぞれ招集された代表格的な将軍達が座っていた……。

 

 サイモン将軍以外は皆、10万越えのタンパク質量だった。そして向かえの席に座っていたサイモン将軍の顔中はキスマークだらけになっていた……。シャルロットは気の毒そうに引き攣り笑っていた。


(ゲイ卓の騎士に会いたくない理由はこれだったのか……)


「──それにしてもエレインちゃん? めっちゃエロい体してるわね〜。今晩、抱いてくださらない?」

 

 ゲイ将軍──見た目はツインテールでまじで女の子にしか見えない程のオカマ。髭もない……。体型も身長もルックスは美少女に見える──男である。


「あっ! おねぇちゃんずるいわよぉ。エレちゃんあたしの方がきっといい思いさせるわよ?」

 

 ランスボーボー将軍。タンパク質量だけならトップの22万。めちゃくちゃ毛深い、毛量が多くてアフロだがパーマだかわからないロンゲ。男である。


「おい! てめぇーら! うるせぇーぞ! ねぇ様と客人の前だぞコラッ!」

 

 ヒゲドレッド将軍──金髪ポニーテールでキリッとした美しい顔立ちで男勝りの女装男子である。男だから男勝りで当然なんだけど……。


「──まぁ──ハシタナイわよヒゲドレッド! もっと慎ましくって言ってるでしょ! ほら! 足を広げちゃダメ!!」

 

 ゲロウェイン将軍──タンパク質量20万……ランスボーボー将軍の次に数値が高い。そしてガタイがいい。男である。

 

「さぁ、料理がさめてしまいますよ姉上達……、私が皆さまのために美しい竪琴をひきますわよ」

 

 ──ジョリスタン将軍──見た目だけでいったらアウラ級の美人。綺麗な琴を奏る。もちろん男である──。


 と、その他にも口数の少なかったゲレス将軍、隻眼なのか眼帯をしていたエロヴィエール将軍とアゴヒゲェイン将軍がいてスリルのある、楽しく夕食を過ごした。


 メイメイの食欲の悍ましさはここでも発揮して食卓の男達を震え上がらせた。

 最後は将軍達の間で誰が今日、サイモン将軍と添い寝ができるかをかけてオカマ達のジャンケン大会が開催されたのだった──。


 ──翌朝

「よし! 行こうか、シャルロット、メイメイ!」


「まだ眠いアル……ふぁ〜」


「いよいよ大精霊様に会うのね!」


 ジュリアス将軍の案内で俺たちはソロモン神殿に通された。


「ここからは、貴方達しか行けないわぁ〜。あたし達でもこのソロモン神殿は許可なく立ち入る事はできないのよ──。まぁ道は一本道だからわかるわよ、あたしはお城で待ってるわねぇん、気をつけてね?」投げキスをしてジュリアス将軍は立ち去った。

 

 ──ソロモン神殿。入り口はドアも鍵もないが結界が張り巡らされているようで許可をもらった俺たち以外は入れないみたいだ。入り口は5メートルは軽く超える高さだった。柱や壁には至るところに精霊の絵が描かれていた。

 入り口を入ってすぐ目の前に青い大きな扉があった。近づくと自然と扉が開き、大きな広い部屋にポツンと金の机が真ん中にあり、その上に虹色に輝くランプがあった。──あの童話や映画とかによく出てくる魔法のランプが、如何にもって風合いでそこにあった。


「──金目のもん、これくらいしかないアルな……持ってって売り飛ばそうエレちゃん!」


「メッ! ダメだよメイちゃん!」シャルロットが静止する。


「【ん〜んんん〜? リヴァイアサンの気配がするぞ──!!】」

 

 魔法のランプは突如しゃべりだし、先端から煙がもくもくと出てきて部屋中が青い煙でいっぱいになって何も見えなくなった。


「ゴホッゴホッゴホッ!」皆が咳き込む。


「大丈夫かい!? シャルロット !? メイメイ!?」


 次第に煙が薄くなり辺りが目渡せるようになった。その時──目の前に5メートルは有に超えるだろう天井スレスレに頭がつきそうな程、大きな巨人が目の前に立っていた。


「君達が、ソロモンが言っていた試練を受けし者達だね。──そこの小さい女の子からはリヴァイアサンの気配がする……なるほどなるほど……」


 この巨人は間違いなくジンなのであろう。全身真っ青で体の芯にまでビンビンに感じる神性……とても触れられないくらい高貴だ。そしてジンはメイメイを見て1人で頷いていた。


「──君、リヴァイアサンの精霊天使だね。ビックリだよ!! ずいぶんとあの強暴凶暴荒くる大精霊がこんな小さい女の子になってしまって──可愛らしいったら──クスクス」


「何アル!? こいつメイメイの事バカにしてんのか? ぶっ飛ばしていい?」


「ダメよ!」


「こりゃぁ失礼──クスクス──僕の名前は精霊ジン。みんなの知っての通り大精霊の一角さ! よろしくね君達」







 

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