それぞれの視点……にいみえりかの場合2

素顔のワタシ



5歳くらいの頃流行っていたアニメが好きだった

話の内容は覚えてないけど、その中のキャラクターの女の子が好きで、歌を歌ったり振り付けをマネしたりしてた


その頃はまだ、パパもママも優しかったんだ


小学校でも、そのキャラクターの女の子の影響で可愛い仕草を普通にしてた


中学に上がって、周りの女子から、アイツあざといとか、男子の告白を断ったらその人を好きだった女子に調子に乗るな!とか、だんだん周りが敵だらけになって、その頃からパパとママの仲が悪くなって


ワタシのせいだったのかな?

ワタシが家で塞ぎ込んでたから、その責任のなすりつけ合いをしてたのかな?

今はそう思う


高校にはなんとか入れたけど、人に顔を見せたくないし、どんな態度で接していいか分からなくなってた


マサくんだけはずーっと変わらず接してくれてたから、マサくんの前でだけは、普通でいられたかな?


マサくんはよくこんなネクラなワタシと一緒にいてくれたよなぁ


マサくんがいなくなってから、以前にも増して他人と関わらなくなって、貞子なんて呼ばれてたけど、他人が近寄ってこないならそれもいいな、なんて思ってた




朧げに、マサくんを食べたという記憶があった

今はそれが妄想だとわかる

けど、その時は現実なのか妄想なのかハッキリしなくて、どうしても確認しないと理性を保てなかったんだ


大神さんに会ってから、たぶん逃げたかったのかな?人を食べたかもしれないってこと、それを確認しなきゃっていう強迫観念から


どうしたら大神さんに興味持ってもらえるかな?ってそんなことを考えるようになっていった


そんな時、ちょうど転校してきた羽純ちゃんが声をかけてくれて、周りの友達?も一緒に話す機会が増えた


気になる人がいるんだ

そう言うと、やっぱ見栄えが大事だよ!

って羽純ちゃん


「え?素材めちゃくちゃいいじゃん?

ナチュラルメイク映えぱないと思う」


そう言われたけど、やっぱり素顔を晒すのは怖くて…… 


ワタシ、ギャルメイクがしたいな

って言ったんだ


羽純ちゃんにはちゃんと話した、昔いじめられててさ、こんなことやあんなことがあってって


「そっかー、じゃしゃーない、おけまる、バッチリギャルにしたげるし!」


なんて、羽純ちゃんはその話でひかないで、笑ってくれたのは嬉しかったな

細かいことはどーでもいいよって言ってくれてる気がしたよ



皆んなでカラオケに行こうと誘われたけど、今の歌は知らないし、その時はなんだか酷く心が壊れてたから、今度機会があれば行きたいなぁ


昔好きだったアニメの歌、今でも覚えてるんだ

振り付けだって覚えてるよ





色々あって、今は大神さんや羽純ちゃんと一緒に働けて、ワタシは変わっていけてると思う


勇気を出して、素顔で部屋を出る

コンタクトも外して眼鏡をかけて


大神さん!ギャルメイクとどっちがいいですかぁ?

って聞いたら、かぶり気味に

「今の方がいい」


そっか、素の自分でいいんだ

元のワタシ、自分の過去は消してしまったけど、ホントのワタシは今やっと帰ってこれたのかな?


鏡の中の素顔のワタシはちゃあんと笑ってた

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