おっぱいを感じながらの観光

 足湯カフェでのんびりとした大輔たちは、二組に分かれて観光を開始した。


 もちろん大輔と都、達也と都姫という組み合わせで、二人きりで箱根を満喫出来て嬉しそうな彼女は腕に抱きついてくる。


 ムニュウ、という擬音が付きそうなくらいに胸を押し付けてくる都は、他に人がいるのにお構いなしだ。


 モデルや女優以上に整った容姿をしているため、都は一人でいるとすぐにナンパされてしまうらしい。


 もし、大輔がトイレに行って一人になったすきにナンパされないようにくっついているのだろう。


 男がいると分かれば大抵の人はナンパしてこない。


「お店が開き始めましたね」

「そうだな」


 足湯カフェでかなりの時間のんびりしていたため、十時になって店が開店し始めた。


 箱根といえば美味しい食べ物が多いので、食べ歩きするのもいいだろう。


「人が多い……」


 十時になれば店が開くためか、観光客と思われる人がかなりの数いる。


 しかもすれ違った人たちのほとんどがこちらを見ており、周囲の視線に慣れていない大輔にはしんどい。


 女性ですら見惚れてしまうほどの容姿の都は、男性のみなず女性ですら見ている。


 そして大輔に向けられる視線は主に嫉妬のようで、こんな可愛い彼女と旅行出来て羨ましい、と思われていそうだ。


「皆に私は大ちゃんものもって分かってもらえますね」

「分かってもらいたいのね」

「もちろんです」


 えへへ、と笑顔を向けられながら肯定せれた。


 周りにいる人たちは都のことを一切知らないのだが、どうしても彼女は周りに知らしめたいらしい。


「箱根っていったら黒い温泉卵だよね」


 調度目に入った店には箱根名物の黒い温泉卵が売っており、大輔は買おうと都を引っ張っていく。


 黒い温泉卵は箱根ではかなり有名で、一つ食べると寿命が一年伸びるらしい。


 あくまで迷信で本当ではないが、せっかく箱根に来たから食べるのもいいだろう。


 早速黒い温泉卵を二つ買い、卵の殻を向いていく。


 黒いのは殻だけで、中身は普通のゆで卵といった感じだ。


「あ、あーん」


 ここでも食べさせてあげたいのか、都は殻を向いた卵を大輔の口元に持っていく。


 あーんくらいだったら人前でするカップルも多くいるだろう。


 最近は良くあーんってされるのに慣れてきたため、大輔は口元にある卵を食べる。


「美味いけどゆで卵だな」


 名物だけあって美味しいが、あくまで卵は卵だ。


 高級な卵を使っているわけではないだろうし、値段を考えば妥当な美味しさだと言える。


 これならスーパーで卵を買って自分でゆで卵を作った方が安上がりだ。


「あーん」


 お返しに自分の黒い温泉卵を都の口元に持っていく。


 嬉しそうに笑みを浮かべた都は、左手で自分の髪をかき上げてセクシーに卵を少しだけ口に咥えた。


「あむ、れろ……」


 何故か都は卵を食べようとせず、口に咥えたまま舐めている。


 小説家が主人公がアニメでヒロインが卵をエッチに食べているシーンを真似ているのかもしれない。


 以前に一緒に見ているから覚えていたのだろう。


「ちゃんと食べろし」

「んんん……」


 咥えて舐めて食べようとしないため、大輔は卵を半ば無理矢理都の口の中身に押し込む。


 いきなり口のな彼女に入れられたからか、都は少しだけ苦しそうにした。


 だけど一切口の中から卵を出そうとせず、むしろ笑みを浮かべて食べていく。


 好きな人である大輔からのあーんされたのだし、口の中から出すわけにはいかないのだろう。


「飲む?」


 足湯カフェを出た時に自販機で買ったお茶を渡すと、都は「んくんく……」と勢い良く飲んでいく。


 都の口の中は小さそうだし、男性のように一気にゆで卵を食べるのはしんどかったようだ。


「悪いな」

「いえ、大丈夫です」


 少し苦しかろうと、都は大輔からされることは全て嬉しいのだろう。


「その……いきなりされて気持ち良かったので、またしてください、ね?」


 頬を紅潮させて耳元で甘い囁きをしてきた都は、若干……いや、ドMのようだ。


 いきなりゆで卵を丸々一個食べされられて苦しいはずなのに気持ち良かったのだし、ドMと言う他ない。


「誘惑は断らないから。して欲しいなら口を開けな」

「は……んん……」


 再び食べさせてほしいのか口を開けようとした都だが、大輔は彼女の唇に自分の指を当てた。


「こういうのは二人きりの時にね」


 胸を押し付けてきたり普通にあーんってするくらいならともかく、先程のように卵を食べるようなことは人前でするものではないだろう。


 それをすぐに察したようで都が頷いたため、大輔は自分の指を唇から離す。


「旅館でしてあげるからね」


 今度は大輔が都の耳元で囁くと、彼女は嬉しそうに「はい」と頷いたのだった。

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