第2話 イライラする
後日王妃直々に呼び出され、色々な決まりごとを一方的に通達された。
「派閥の調整中だから、大人しくしていてちょうだい」
お願いする立場なのに偉そうにも程があるし、とても冷たい視線。早く子離れしろよ。
まず、護衛付きなら許されていた町への外出が禁止。過激な第二王子派閥からの暗殺の可能性があるらしい。
しかも、第一王子派閥からの暗殺の可能性もあるとか。
何やら第一王子の婚約者に自分の娘をと思っていた人が多くいるらしく、突然現れた私を邪魔者だと思う人がいるとかいないとか。
自分の派閥の最低限の行動くらい、ちゃんと制御してからこちらに話を持って来いよと思った。
次に今まで気にしたことがなかった派閥による交遊関係の制限。
「第二王子派の関係者との交友関係を一旦全部切ってちょうだい」
一度でも切ったら修復は難しいと思うのに、将来的にも派閥争いを望んでいるのか? それともただのアホ?
中立派だった私だからこそできることもあると思い理由を尋ねると、私からの情報漏洩を防ぎ、第二王子にも協力的だと思われてはいけない立場だからだと言われた。
私にも友人にも失礼だなと思った。元々利害関係で仲良くなったわけではない。
漏洩されたら困るような情報も、私を信頼出来ないなら教えなければいいじゃないとも思った。
そもそも、争いに勝手に巻き込んだ癖に信用していないのにも腹が立つ。
帰宅後、早速父に報告した。父はまた渋い顔になって陛下に真意を尋ねるとは言ってくれた。
父も同じ気持ちだったけれど、流石に私はまだ死にたくないし、会いに行く人、一緒に遊ぶ人にも迷惑がかかるので、外出は諦めるしかなかった。
家族も心配するので我慢する。
交友関係についても、今の状況では私の友人を利用しようとする人が出てくるかも知れないので、表だっては諦めることになった。表ではね。
普通に考えて、王家と縁を持つ予定の私を、このタイミングで切り離す友人は頭が足りないと思われる。
例え第二王子派でも、もしもの時の為に縁は繋いでおいた方がいいと考える筈。それを全て切れってなんだ。
父でさえも王妃はアホ……? と独り言を言ってしまうくらいに困惑していた。
あまりに窮屈な状態に突然置かれることになった私に、家族が同情してくれてとっても優しくしてくれる。
父も母も兄も私が早くこの状態から解放されるよう働きかける為に、頻繁に外出している。
婚約者ができたのだからと、男性との交遊が厳しく制限された。
妙な噂を立てられる原因を作ってはいけないそうだ。これは、まぁ納得。
だけれど、兄はいいけれど、従兄弟とも会うのを禁止された意味がわからない。私ってばどれだけ信用ないの。
確かに従兄弟の一人は無駄にモテる。でも、お互いに家族だった。
私は確かにイェルク殿下に対してこれっぽっちも興味はない。
まともに話をしたこともないのだから、当然だと思う。それを分かっていて私を指名したのは陛下だ。
ここまで細かくとやかく言われるとは納得できない。早速父に報告した。
次から次へと報告する案件が出てくるものだから、父も王家にうんざりしていた。
父が集めた情報によると、息子大好き王妃の暴走の可能性が高いとか。
それを諫められない陛下に家族共々がっかりだよ。
多くの友達と直接会うことができなくなった。
友達が遠く感じてしまい、とても歯痒い。父には状況が落ち着くまでの我慢だと言われた。
入学していた学院での成績は常に上位でいることを求められ、それとは別に王家の仲間入りに必要と言われる勉強をすることになった。
元々侯爵家に産まれていたので、他国の語学や風習、マナーも学んでいたが、より高度なものを求められた。
正直、ここまでいる? な内容だった。私に何を望んでいるのか不明過ぎる。
それらは第一王子派の人に私が婚約者として認めてもらうために必要とか。
そっちから指名しておいて、何で私にここまでの努力が必要なのか、本気で疑問。
あんたたちがもっと本気で頑張れよ。特に陛下! さっさと王妃の暴走を止めろ。
……………。
第一王子派の人や有力者と親交を深めるため、婚約者との時間を取るため、勉強のためという理由で自由時間がどんどん減っていった。
月に一度行われる王子とのお茶会は、正直つまらなかった。
見本となるような紳士淑女が行う、穏やかで中身のない会話。
大勢の人間に一言一句聞かれているし、見張られてもいる。
私への教育の一環でもあるらしいので、後で注意を受けることもあった。その状態で楽しめる訳がない。
しかも、王子さえ審査する側なのだ。勝手に選んでおいて、上から目線過ぎることにイライラする。
が、王子は優しく穏やかな物言いをするので何とか我慢できた。
殿下が許しても、先程の発言は不敬です。
殿下が許しても、先程の発言は下品です。
殿下が許しても……。やっぱりイライラするわ。
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