第649話 危機感
「これで元に戻ったっす!」
璃水が喜びの声をあげる。
元気っ子の璃水にはやはり笑顔が似合う。
「さぁ、闘いに戻るっす!」
璃水が拳と拳を目の前でぶつけ合って気合いを入れる。
「ちょっと待って。」
気合い十分の璃水の出鼻をくじくアマビエ。
「ちょっと、なんすっか?
せっかく良い気合いがのったのに‥」
璃水があからさまに不満な顔をする。
「うーん、気になるからちょっと診察させて。」
アマビエはそう言いだすと璃水の診察を始めてしまう。
璃水も断る雰囲気でないので従う事にする。
それから20分後‥
「成長してる!?」
アマビエが驚きの声をあげる。
「嘘!
マジっすか!?」
璃水も予期せぬ子供の成長に驚きを隠せない。
「頭を剃ったのが良かったのかしら?」
明日香が再度斬ろうとして仕込み杖に手をかける。
その様子を見た璃水はとっさに俺の背後に避難する。
「うーん、剃ればいいって事ではないと思う。
何だろう‥
明日香と戦った時は成長しなかったのに‥
あっ、もしかしたら明日香が本気を出さないと無意識に思っていたとか?
ただ強者に悪戯れてもダメって事なのか‥
うーん、剃られた事で‥」
アマビエが考え込んでしまう。
俺と璃水と明日香はアマビエが結論を出すのを見守るだけであった。
その後、アマビエは一つの結論を出す。
「やっぱり、母体が危機感を持たないとダメなのかも。
顔見知りだと無意識に危機感を弱めているはず。
本気で検証するなら危機感を見知らぬ者と闘わないと。」
アマビエの見知らぬ相手という言葉に嫌な予感がするのであった。
神side
「危機感だって。」
イブキがアマビエの言葉を引用する。
「なるほど‥」
イザナミは考え込んでしまう。
「‥‥‥」
セオリは何も語らない。
「ちょっとアレの封印解いてみる?」
イブキが提案を始める。
「アレとは、もしやアヤツらか?」
イザナミはイブキの話の相手がわかったようだ。
「そう、アイツら。
生意気だから封印した奴ら。
アイツらなら忖度なく戦ってくれるんじゃない?」
イブキの言葉を聞いて、黙っていたセオリが口を開く。
「私は反対。
絶対皆んなが傷つくから‥」
セオリは反対のようだ。
「やっぱり反対かぁ‥
セオリは優しいからね。
でも優しすぎても皆んなは成長しないよ?
ほら、獅子は我が子を谷底に‥。」
「獅子じゃないし。」
イブキとセオリが言い合いを始める。
「ワシも封印を解くのに賛成じゃ。
皆も本能では闘いに飢えておるはず。
子も出来、少し牙を抜かれた状態じゃからの。
そろそろ尻を叩いてやらねば。」
イザナミはイブキの賛成にまわるようだ。
「絶対にいや!」
セオリが珍しく声を荒げる。
「う〜ん、そこまで否定されると逆に興味がわいてくるよ。
うん、こうなったら多数決を取ろう!」
ここにきてイブキが強引な策にでる。
「それは卑怯だよ!」
セオリがさらに声を大きくする。
「ワシも封印を解くのに賛成じゃ。
これでワシらの勝ちじゃ。
ほれ、いくらお主でもワシら2人を相手には出来んじゃろ?
まぁ、消滅させるような事はさせぬから。」
イザナミも賛成に回ったのでセオリが負けてしまう。
「‥‥‥
あの子達に何かあったら本気で怒るからね。
イチロー君に言ってお前らを消すからね。」
セオリは納得がいかないが多数決に従う事にする。
こうして神の思惑により封印された妖怪達が解き放たれようとしていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます