第508話 ぶちギレ


八重花が話しかけても文車妖妃は無反応であった。


このままでは埒があかないので、俺の方から話しかける事にする。


「文車妖妃さん?

 良かったら、話を聞いてもらえませんか?」


「‥‥‥‥」


無反応である。


「文車妖妃さん?」


聞こえてないのかな?


「文車妖妃さん?」


今度は声を大きくする。


「聞こえてるから‥。」


文車妖妃さんから反応があった。


「良かった。

 文車妖妃さんに‥『私の事はヨウヒって呼んで!』」


俺の言葉を途中で遮って名前を伝えてくる。


ヨウヒ?

ふぐるまようひだから?


機嫌が悪そうなので素直に従う。


「ヨウヒさん、良かったら話を聞いてもらえませんか?」


ヨウヒと呼ばれて機嫌が戻ったのか目線だけはこっちを向いてくれた。


安堵していると八重花が割って入ってくる。


「ふ〜ちゃん、車は?」


八重花が泣きそうな顔で問いかける。


「‥‥‥」


無視である。


「グスッ‥。

 ふ〜ちゃん‥。」


ブチっ!


あっ、何かが切れた音が聞こえた!?


「ふ〜ちゃんなんて名前は捨てたの!!

 私はヨウヒ!!

 車なんて重いから捨てたの!!

 どんだけ重いと思ってるの??

 そもそも書物なんて紙媒体で持つ必要ないの!!

 今は電子書籍使っての!!

 それに古臭い着物もやめたの!!

 私は普通がいいの!!」


ヨウヒさん、ぶちギレである。


普通を目指すと女子高生の格好なんだ‥。

思わず突っ込んでみるが、もちろん口には出していないのであった。

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