第451話 アリシア5


我が目の前にいる事は分かっているだろうに目を開けるつもりはないようだ。


こうなったら我慢くらべだ。


我の僅かに残ったプライドが先に声をかける事を躊躇させた。


さすがに根を上げたのか目をゆっくりと開け始める。


女をどれだけ待たせるのだ!

立場が違えどムカついてくるのであった。


男は目を開けると我の目を凝視する。


他の誰も我と目を合わせようとしなかったのに、この男は瞬きもせずに我を見続ける。


まるで視姦されているような感覚に陥入る。


恥ずかしくてどうにかなりそうだ。


思わずよく考えずに口が開いてしまう。


「我の直感がお主に買ってもらえと言っておるがどうじゃ?

 我を買わぬか?」


何を言っておるのだ我は‥。

焦って思ってもなかった事を口にする。


「す、すでに何人か奴隷は購入していますので、結構でございます。」


男も焦りながら応えくる。


「ほう。

 我を前にして普通に喋るか‥。

 実に面白い。」


だから言いたいこと違うのに‥。


何故か、この男の前だとカッコつけてしまう‥。


男は驚いて周りの者達を見ているかと思ったら、抱きついている女とイチャイチャしている。


何故だ、別にこの男を好きになったわけではないのに胸がチクリとしていた。

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