第367話 闇11


 ディアーナの真剣な表情を見て、こちらも真剣に話を聞く事にする。

なので今行われているNo.2のプロレスラーのような筋肉ムキムキの男性のオークションには参加しない事にする。


まぁ、もともとオークション自体興味をないけどね‥。


ディアーナに向き直って話を聞く。


「この後に出てくる『グレイ』と言う男を買ってもらえませんか?

お代は必ずしお支払いしますので‥。」


えっ?この流れはスタンと同じような‥。


「理由を聞いてもいいかな?」


代わりに競り落とすのなら理由を聞く必要があった。


「グレイは裏の世界では有名な殺し屋です。

 先程の男は快楽のために殺したのに対して、アイツはお金さえもらえば赤ん坊だって殺す奴です。

 私が調べただけで300人以上が殺されています。」


ディアーナさんが握った拳をさらに力を込めて握りしめる。


「もしかして誰か大事な人が被害にあったの?」


先程の復讐の炎はただの正義心からくるものではない事は百も承知だった。


「わ、私の家族です‥。

 私の家は商いをやっていました。

 まだ私は小さかったですが、父と母、それに兄や姉と一緒になってお店を手伝っていました。

 あの時までは本当に毎日が楽しかった‥。

 あの日、深夜に強盗が家に入りました。

 私は姉と一緒に寝ていましたが、父と母の悲鳴を聞いて目を覚まして‥。

 姉は私をベッドの下に押し込むと囮になって部屋から飛び出して行きました。

 その後、兄の悲鳴が聞こえ‥。

 姉は私が出て来ないように枕などで塞いでいましたが、時間はかかりましたが何とかベッドから出る事ができたので家族を探しました。

 ‥‥‥すぐ近くの廊下で姉は死んでいました。

 かなり酷い傷でしたが姉は私の事を思ったのか悲鳴をあげなかったようです‥。

 もちろん他の家族も全員殺されていました。」


話が終わる頃にはディアーナの目が赤くなっていたが、涙は流していなかった。


俺と目が合うとディアーナは寂しそうに呟きました。


「あの時、私の涙は枯れてしまったようです。復讐を果たしていないのに泣けるわけはありません。」


ディアーナが気丈に唇を噛むのを見て胸の内に怒りがこみあげくるのであった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る