第357話 闇1


「イチロー、これは美味しいな。」


スタンが笑顔で串焼きを頬張る。


購入までのトラブルがなければ喜んでもらえて嬉しいだけなのだが、トラブルの後なのでその笑顔が少しだけイラっとする。


「イチロー

 今、気がついたのだが何故歩きながら食べるのだ?

 行儀が悪くないのか?」


たしかに日本人の俺も歩き喰いに抵抗はあったが、他の人たちがそうしているので豪に入れば郷に従えの精神が働いてしまうのであった。


「他の人もやっているので、真似しただけですよ。まぁ、あまり気にしなくていいです。」


少し強引かなと思ったがスタンは一応納得してくれたようだ。


その後もスタンと街をブラブラとしていくが、スタンは気になったものには何でも反応していった。


「イチロー、あれは何だ?」

「イチロー、変な物が売られているぞ。」

「イチロー、アレを買ってくれ。」


何だろう‥

小さい子供を世話している気持ちになってきたぞ。


そう思っている矢先にスタンが怪しげな男に声をかけられる。


「オタクらどこぞの貴族か何かだろ?」


ヘラヘラ笑いながら男が指摘してくる。


う〜ん、見るからに怪しい奴だなぁ。

こう言う時は素直には答えない方がいいだろう。


「何でわかったのだ?」


おーい!

スタンが素直には答えてしまった。


「やっぱり!

 そりゃー分かるぜ。

 身なりは平凡だが、身のこなしや雰囲気が全然違うからな。」


男は高貴な人間だとわかって話しかけてきたのだ。

怪しい‥。


「アンタらツイてるぜ。

 実はこの後オークションがあるんだが、上客の一人が来られなくなって困ってたんだ。

 本当はメンバーしか参加出来ないのだが人数が揃わないとまずいことになるので‥。」


最後は聞き取れなかったがきっと危ない目にあうのだとわかった。


「ちなみにオークションの品は何ですか?」


かなり怪しいので素直には答えるとは思わないが一応聞いてみる。


「アンタらツイてるぜ!

 今回はいろいろ揃ってるからな。」


男がゲスイ笑い方をする。


「いろいろとは?」


今まで黙っていたスタンが口を開くが何となく声に怒りを感じたような気がした。、


男はそんな事には気がつくことはなく素直に答える。


「人間、獣人、エルフ。

 男も女も‥。

 今回はいっぱい出品されてますぜ。」


ひょんなことから闇オークションが開催される事を知るのであった。

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