第356話 消えます


 静まりかえった状態でスタンの声が響く。


「イチロー、この者は何で怒っているのだ?私は何か悪い事をしたのか?」


スタンは悪気のないキョトンとした顔で俺に質問をしてくる。


う〜ん、この人に悪気のないのはわかるけど、きっと怒ってる人には逆効果なんだよね。

嫌な予感は当たるようで怒った男は腰の剣に手をかけ始める。


さすがに男が殺気を飛ばすのでスタンも反射的に身構えたようだ。


困った。

怒り過ぎの男も悪いけど元々はスタンが悪いし、最後の言葉は煽りに近いから‥。


とにかく喧嘩を止めようと男に近づくと男が剣を抜こうとする。


しまった!

逆効果だったか!


咄嗟に逃げようとした瞬間、突然男が消えたのであった。


うん。

すぐにセオリ達の仕業だとわかった。


『もともとこっちが悪いから乱暴はやめてね。』


セオリに心の中で指示を送っておく。


『OK!』


すぐにセオリからかるい返答があった。

やっぱりセオリの仕業だったか‥。


男が消えた事で騒ぎが収まったと思ったのか街は元のガヤガヤな状態に戻る。


さすがわ異世界‥。

男が急に消えたのに特に大騒ぎになることはなかったのであった。

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