第255話 貴女の名前は?


「アサシンは職種だよね?」

すると女性が真顔で答える。


「すいません、間違いました。」

テヘって感じで自分の頭をこつく。


そもそも全身黒いし、真顔なので全然可愛くない。


妙な空気が流れているので、もう一度尋ねる。


「貴女の名前は?」


「アサシンの私には名前など‥。」

うわぁー、めんどくさい系の人だ。


「この方は、シノブ様です。」

しれっとラーが名前を言ってしまう。


「もう、ラー様の意地悪。もっと遊ぶつもりでしたのに‥。」

シノブさんが頬を膨らまして抗議してくる、真顔で‥。


何か疲れるなこの人‥。


「シノブさんは何でこの村にいるの?一人だけ浮いてる感じがするけど‥。」


「よくぞ聞いてくれました。私はとある国のアサシンをしてました。それはそれは有能なアサシンでしたので超有名になりまして‥。どんどん依頼が来るのでバンバンこなしていきました。すると仲間からは仕事が減ると言って文句を言われ出しまして‥。」

シノブさんが悲しそうな表情になる。


「もしかして仲間の人に裏切られたとか?」


「いえ‥。文句を言われたので頭にきて国を飛び出しまして‥。準備もなく急に飛び出したので食べ物もなくて‥。森でお腹をすかしていた所をこの村の人に助けられまして、命の恩人なのでその後はこの村で暮らしています。」


うーん、思ったよりショボい話だった。


「今、ショボいって思ったでしょ?顔に出てますよ。」

シノブさんに指摘されてしまった。


「すいません。」

思わず謝ってしまう。


「認めましたね?そこは嘘でも否定しないと‥。」


申し訳ないので頭を下げておく。



その後、俺たちの事やラー達の両親の話をシノブさんにした。


「イチロー様のことは物凄く気になりますが、今は置いといて‥。このままではラー様が族長になるのは難しいかと‥。」

シノブさんの表情がくもる。


「やっぱりですか‥。」

ラーも難しい表情になる。


「長女だからって族長になれないの?」


「いえ、長女の私に権利はあるのですが、族長である証がないことには難しいのです‥。」


「族長の証?」


「村に代々伝わっている指輪です。今は父が持っているのですが‥。」


ラーのお父さんは既に亡くなっているので指輪を手に入れる為には、亡骸を探す必要が出てきたのであった。

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