第252話 訴え
「この村はこのままでは終わります。たとえスタンピードが収まっても戦士達がいないと成り立ちません‥。」
ラーさんが感情のない声で淡々と話をしている。
「もちろん村の防衛の為に残った男達がいますが、今後村を守っていくには足りません。」
「父と母が亡くなった場合、次の族長は長女の私になりますが‥『イチロー君、止めて!!』」
セオリが突然現れて乱入してくる。
ラーさんはどこからか出した短刀で自らの喉を斬ろうとしていた。
セオリの叫び声で俺の集中力が高まる。
絶対に死なせない!
俺の想いに応えるように、時間が止まったかのように全てがコマ送りになっていた。
ラーさんが躊躇なく短刀に力を込める。
剣先が数ミリ皮膚を切り裂く。
少し血は出たがギリギリのところでラーさんから短刀を取り上げることが出来た。
「どうして邪魔するんですか!!」
ラーさんが泣きながら叫んでくる。
「どうして貴女が死ぬ必要があるんですか!」
俺も興奮したのか語尾が強くなっていた。
「イチロー様にこの村を保護してもらうにはヤーが族長を継いだ方が良いからです!この村の掟で族長の権利を放棄する事は出来ません!だから私が死ねば自動的にヤーが族長になります。」
俺の目の前には、村を守る為には自らの命を捧げようとする強い女性がいた。
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