第251話 ラー
「そういえば、助けて頂いた恩人に自己紹介がまだてしたね。」
お姉さんは背筋を伸ばし姿勢を正した。
「私は族長の娘、ラーと言います。改めて、助けて頂きありがとうございます。」
ラーは深々と頭を下げた。
「俺はイチローと言います。助けたのは妹さんの事もあったので恩に感じる事はないですよ。」
「妹と何かありました?」
ラーさんの眉毛がピクリと反応した。
「俺、こいつの番になった!」
俺が説明するよりも早く妹が誤解を招くような説明をする。
「番?‥‥‥イチロー様、どう言うことでしょうか?」
言葉は丁寧だがラーさんの背後から不穏な気配が立ち込める。
ラーさんはいきなり飛び掛かってくる事もなく、きちんと俺の説明を聞いてくれた。
「なるほど‥。」
ラーさんは目をつぶって何かを考え出した。
「ヤー、ちょっとイチロー様と私に水を持ってきてくれない?」
ラーさんは目を開けると妹さんにお願いをはじめた。
あっ、妹さんヤーって名前なんだ。
もしかしてこの村人の名前って一文字に「ー」をつける法則なのかな‥と考えているとラーさんの表情が変わった。
「イチロー様、正直にお答え下さい。スタンピードを見に行った戦士達は全員生きてなくありませんか?イチロー様は何らかの方法でその事を知ったのではありませんか?」
ラーさんが真剣な表情で俺の目を見てくる。
あまりの迫力に視線を逸らしたくなる‥。
ラーさんの目線は嘘を言わないでくれ!っと訴えかけているように思えた‥。
「ぜ、全員既に死んでいます。」
俺の言葉にラーさんは息を呑み込んだ。
何とも言えない空気が流れる‥。
ラーさんは息を吐くと、凛とした声で言葉を発しだす。
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