第161話 王妃選び11


 王妃選び、人間代表戦の第一試合はレイペル、シャール、アルツ、メイベル、カタリーナ、ジルヴァまで終わった。

本命のジルヴァが一位になるかと思われたが少しやり過ぎてセオリさんの逆鱗に触れて、よもやの反則負けである。

なのでこの時点での一位は聖水のカタリーナである。


うーん、聖水で一位ってのもカッコ悪いよね。でもステアが聖水に勝てるとは思えないけどなぁ‥。

ステアの心配をしているとノックがしてくる。


「失礼致します。」


いつも通り、完璧な所作で部屋に入ってくる。


流れるような感じで俺の目の前に紅茶を並べてくる。あー、動作を見ているだけで感心するんだよなぁ。


誰かみたいにこぼしたり、斬りかかったりしてこないからのんびり出来るんだよね。


嫌がらせの事を忘れて紅茶を堪能する。


紅茶を飲んでいると口の中に異物を感じた。

最初は茶葉でも入ったのかと思った。


完璧メイドのステアが茶葉を残すとは思えなかったが特に気にせず口から異物を出して指で掴んでみる。


そして俺は目を疑った。


俺の指先には地球にいる時から大嫌いだった、例の黒い悪魔の足らしき物があった。


おえー。


とりあえずバケツを収納から出して、飲んだ物を吐き出す。


おえー、おえー。


全てを吐いてから、口の中に『クリーン』を何度もかける。


途中で目でセオリに訴えかけるが、反則負けにするつもりはないようだ。


それから時間がかかったが何とか落ち着いた。


「ステア!さすがにGは酷いよ!!」

俺は涙目でステアに抗議する。


「大変申し訳ございません!」

ステアが深々と頭を下げる。


「もうトラウマだよ。紅茶飲めなくなるかも‥。」


「大丈夫ですよ、旦那様。今後は私が口移しで飲ませますので。」

そう言うとステアが新しく入れた紅茶を口に含み、俺に口移しするのであった。


『イチロー君、私も後でしてあげるね。』

セオリもステアに触発されたようだ。



それから応接室に7人が集められた。


「それでは、イチロー君から優勝者の発表です!」

セオリが盛り上げてくれる。


「では、『嫌がらせ』の優勝者は‥。」


どこからかドラムロールが聞こえてくる。


「優勝者は『ステア』です!!おめでとうございます!!」


俺がステアの優勝を宣言する。


優勝を逃した子は残念がっていた。

ステアはあまり表情を変えずいつもの冷静な顔をしていたが、口元だけは微笑みをこぼしていた。

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