第126話 暴挙後4


 エステが立ち上がって悲痛な表情を浮かべながら言葉を紡ぐ。


「きっかけはイチローさんかも知れませんが、領主が暴挙に出たのは私が原因です。お母さんが無惨に殺されて木に吊るされたと聞いて私の中で何かがキレてしまい、気がついたら領主に切りかかっていました。そのせいで皆んなの家族が殺されてしまいました。今回の責任は私にあります。皆さんの家族を生き返らせることは出来ませんので、私1人の命で償わさせて下さい。」


そう言うと隠し持っていたナイフを首に当て出す。俺は咲夜に指示を出しエステの動きを封じる。


「ここで君が死んでどうするの?俺と君がキッカケを作ったかもしれないけど、一番悪いのは領主だよ。」


俺の言葉を聞いてエステが涙を流しだす。


「俺とエステに責任をとって欲しい人はいる?」

俺が問いかけるが誰も反応はしない。


「ちなみに領主とその部下は全員殺しています。彼らは冥府の世界で一生苦しんでもらう予定です。死ぬことない世界で一生‥。」

子供達が引きました。


「さて悲しんでいるところで少し残酷かも知れませんが、今後のことを考えたいと思います。」

特に反対意見もないので話を進めます。


「この中で村以外の場所に家族がいる人はいませんか?」

すると数人が手を挙げる。


「手を挙げた方は、その家族のところで暮らすことは出来ますか?」


すると1人の女性が暗い表情で口を開く。

「遠い親戚ですので一緒に暮らすのは無理です。最近は作物の育ちが悪くてどこの村も大変みたいです。子供も小さいですし夫がいなければ、飢え死にするしかありません。」


「アメリア、君のお父さんに助けて貰えないかな?」


「お待ち下さい!国に頼んでも多少のお金は貰えるだけで根本の解決には至りません。私達の村は男手がなくなった時点で終わりです。このままではいつか奴隷狩りに捕まって娼婦にでもされるだけです。」


「アメリア、国が何とかしてくれないの?」


するとアメリアが申し訳なさそうに答える。

「その方の言う通りだと思います。そもそもあの領主を野放しにしている父ですので‥。」


さて、どうしようかな‥。

このまま国に任せると、この人たちはきっと不幸になりそうだし‥。

うーん、鑑定するまでもないよな。


『鑑定さん?この人達って国にまかせるとどうなるの?』

ダメ元で尋ねてみる。


『フフ、面白いですね、鑑定スキルを使わずに私に直接聞くとは。面白かったので教えてあげますよ。国に任せると盗賊に襲われたり、奴隷狩りにあったり‥。ハイ、全員不幸な目にあって死にます。』


『国に任せられないなら打つ手がないじゃん!』


『あなたが助けるしかないですよ?』


『まさか全員嫁にしろってこと?』


『小さい子もいるしそれは無理でしょ。まぁ、最終的にはなるかもしれませんが‥。』


『わかった、とりあえず俺の屋敷で面倒みることにするよ。今後については国に相談してみる‥。』


俺は鑑定さんとの会話を終え、当面屋敷で面倒することを全員に伝えてこの場を解散する事にした。

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