第120話 暴挙2


村長は村人を人質に取られ、断腸の思いで娘を迎えに行く事になる。


村長が家の奥にある隠し扉をノックする。


「エステ、すまないが鍵を開けてくれないか?」


「お、お父さん?無事だったの?すぐ開けるからちょっと待って。」


エステと呼ばれる娘が、扉から飛び出して父親に抱きつく。


「良かった、お父さんが無事で‥。いきなり逃げろとかいうから心配したよ。盗賊でもきたの?」


「盗賊ではないよ‥。領主様がきている。」


「領主様?どうしてそんな偉い人が家にきてるの??そう言えばお母さんは?」


娘が矢継ぎ早に質問をしてくるが父親は本当の事が言えない‥。

父親は泣きながら娘にお願いをする。


「すまないが今晩、領主様のお相手をしてくれないか?お母さんは他の方の相手が忙しくて無理なんだよ。」


娘が頭の良い子なので父親の様子から事態を察していた。


「わかった。私が領主様の相手をするわ。」


「本当にすまない。」

父親が何度も頭を下げる。


村長が娘を連れて領主の元に向かった。


「ほう!母親に似て、美人だな。こんな寂れた村にはもったいない。俺の妾にしてる。」


「ありがとうございます。」

娘が無表情で返事をする。


領主が娘の手を引いて寝室に連れていこうとすると娘が一言質問をした。

この一言がこれから起きる悲劇の幕開けとなった。


「お母さんはどこですか?」


「お前の母親か?先程、俺が相手してやろうとしたら舌を噛んで死にやがった。ムカついたんで裸にして外の木に吊るしてやったよ。」

領主が面白おかしく笑いながら母親の死を説明する。


娘の中で何がプチっと切れた音が聞こえた。

村人が人質になったことを忘れて、隠し持ったナイフで領主に斬りかかった。


本来であれば素人の娘の攻撃が当たる事はないが、領主も油断していたのでナイフが顔を斬りつけてしまった。


「俺の顔を傷つけたな!許さん!」


そう言うと領主が剣を抜き、娘を切りつけようとする。

咄嗟に村長が庇うが村長ごと剣で斬りつけてしまう。


怒りが収まらない領主は残酷な命令を下す。


「村長の娘が領主である私に手をあげた。これは許さざる行為だ。よってこの村の人間を皆殺しにする。」


さすが皆殺しと聞いて騎士達は狼狽えるが、領主が本気で言っている事に気がつき、命令に従うのであった。



その情報は瞳からイチローに上がり、討伐の許可を得てイチローが駆けつけると村人は全員殺されていた。

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