第103話 訪問10


 アメリアが泣き止むのを待っていると予想もしなかった人物から声が掛かる。


フランカ「このままだとアメリア、その貴族と結婚させられるよ。どうするの?」


 さっきまでイチローの刀を必死に眺めていたフランカからのまさかの質問である。

正直、存在自体忘れていた。


イチロー「アメリアのお父さんに説明するのは?」


コルベルト「イチロー様、それでは解決にはなりません。そもそもアメリア様のお父上は策略について気がついています。それをなんらかの理由で見逃していると思われますので、説明しても効果はないかと‥。」


イチロー「だったらどうすれば‥‥」


フランカ「簡単だよ。私とアメリアが使徒様のお手付きになったと公表すればいい。そうすればいくら貴族だろうと手は出せなくなるよ。私、冴えてる!!」


イチロー「それはさすがに不味くない?俺

、その貴族に襲われそうじゃん。それに何でフランカも入ってるの?」


コルベルト「策としては、有りだと思います。ただ、他の国がどう動いてくるか‥。」


フランカ「この剣、見た事がない素材で出来てるの!他にも隠しているものがありそうだしね。それに私もいつかは結婚することになるだろうし、どうせならイチローのような優しい人と添い遂げたいかな‥」


 最後の方が顔を赤くしている‥。不覚にもちょっと可愛いと思ってしまった。


イチロー「このまま、あなたを不幸な目にあわせたくありません。とりあえずお手つきになった事にして、時間を稼ぐのもいいかと思いますがどうでしょうか?」


今までずっと黙っていたアメリアが口をひらく。


アメリア「正直言えばショックで誰を信じればいいのか分からなくなっています。でも短い間ですが、イチロー様の人となりをみて、この人なら信じるに値する人物だと思いました。イチロー様のプロポーズ、お引き受けします!!」


ん?いつ誰がプロポーズしたって?


アメリア「出来れば、今日にでも子を授かりたいのですが‥‥。」


あれ?思ってたと違う流れになってきたかな。


イチロー「ごめん!話を進める前に妻たちに許可をとる必要があるんだけど‥‥。」


アメリア「それでしたら、私の口から直接説明したいと思います。」


え?正気ですか?


イチロー「本気?」


アメリア「はい。フランカ様と二人で説明したいので、今から会わせて下さい。」


何かさっきと性格が違うような。こんな積極的だったかなぁ。


アメリアがどうしても会わせて欲しいとのことなのでとりあえず応接室の前まで二人を連れて行く。


応接室の扉の前まで来たが、ノックするのが怖い。何か扉の向こうから怒鳴り声が聞こえる。逃げ出したいが、後の二人から早くしろ!的なプレッシャーを感じる。


南無三!!


イチローが扉をノックする。すると苛立っている明日香が顔を出す。


明日香「何かよう?今、アイツの相手で忙しいのよ!って、後の女誰?」


明日香が睨みつける。


アメリア「奥様方にお願いしたいことがありまして、イチロー様に案内してもらいました。大変忙しいと思いますが、お時間を頂けないでしょうか?」


明日香「アイツと違って礼儀正しいわね。私が睨んでもビビらないとは‥。面白い!二人とも中に入っていいわよ、話を聞きましょう!」


アメリア「ありがとうございます。」


アメリアが深々と頭を下げ、フランカと二人で部屋の中に入る。イチローも入ろうとしたが、明日香に追い出されてしまう。


明日香「あんたは邪魔!これは女の戦いなの!!」

そう言うと、扉を力一杯閉めるのであった。

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