第77話 土下座
夢を見ていた。
何故か俺はメアのお母さんになっていて、辛い過去を体験していた。
人間を恨む気持ちもわかるが、親子で歪み合うのは止めて欲しいと思った‥。
意識がだんだんと覚醒していく。
すると薬草などの匂いがすることに気がつく。
ゆっくり目を開けると、俺の顔を覗き込んだアルツと目があってしまう。
アルツ「良かった‥、意識が戻ったのね。」
イチロー「ここは?」
アルツ「屋敷に作った診療室よ。」
何だか頭がぼんやりする。
イチロー「あれからどうなった?」
俺は上半身を起こそうとするが力が入らない。
アルツ「駄目よ動いたら!まだ絶対安静よ!!」
イチロー「みんなは無事なの?」
アルツ「貴方以外はピンピンしてるわ‥。」
イチロー「良かった‥。」
アルツ「少しは自分を心配しなさい‥。左腕を見て。」
目線を左腕に向けると包帯ぐるぐる巻きになっている肘から先が無くなっていた。
アルツ「拘束が強まったせいで腕を噛みちぎって、飲み込んでしまったみたい。八岐大蛇様がお腹を食い破ろうとしたけど、ドラゴンを殺すことがイチロー様の本意ではないだろうからって、みんなで止めたそうよ。」
どうしよう‥。
左目は眼帯、左腕の先が無くなって、もし黒い義手なんてつけたら、どっかのキャラに似てくるよ。まだ黒髪だからいいけど‥。
アルツ「とにかく今は休むことが先決なので、お薬を飲んで寝なさい。」
アルツにお薬を飲ませてもらって、眠るのであった。
次に目を覚ますと、部屋には誰もいなかった。
今度は動けそうなので、キッチンに水を飲みに向かう。
アルツの部屋に何かの飲み物があったが、怖くて飲もうとは思わなかった。
感覚でかなり遅い時間だと分かったので静かに廊下を進む。
血が足りてないのかまだ少しフラフラしてしまう。
とりあえず水を飲んだので、アルツの部屋に戻ろうとすると、ダイニングに灯があるのに気がつく。
近づいてみると話し声が聞こえてくる。
何だろう、殺すとか聞こえてくる。
とにかく止めようと中に入ろうとするが、透明の膜のようなものに邪魔をされる。
手で破ろうとするが、片手なのでなかなか出来ない‥。
思い切って体当たりをすると、膜が破れ中に入れた。
部屋の中に入ると、女性陣全員が取っ組み合いの喧嘩を行なっていた。
青タンが出来てたり、鼻血が出てたり、服も破れて、いろいろはみ出していました。
俺が入ったことにも気がつかないようなので思いっきり叫んでみる。
イチロー「ヤメロ!」
全員が俺の顔をみる。
叫んだことで血が昇ったのか足元がふらつく‥。
誰かが側に来そうになったがそれを手で制して、さらに言葉を続ける。
イチロー「全員、正座!!」
誰かが何かを言いそうになったが睨んでそれを止める。
とりあえず、俺は椅子に座る。
体調が悪いせいか、気持ちがモヤモヤする‥。
イチロー「喧嘩の理由は?」
自分でもビックリするような低い声が出てしまった。
みんなを怖がらせてしまった‥。
誰も喋らない。
イチロー「緋莉、理由は?」
緋莉「こいつのせいで、イチが腕を失った。命で償わせる!」
イチロー「明日香、他には?」
明日香「八岐大蛇も悪い!!」
大筋で喧嘩の原因は分かった。
さて、どうやってこれを収めようか‥。
悩んでいると、見慣れない銀髪の女性がいた。髪の毛はグチャグチャで着ているドレスもボロボロでほとんど裸である。
顔をボコボコにされていた‥痛々しい。
イチロー「メアのお母さんですね?大丈夫ですか?」
プリムラ「プリムラと言います。この度は私が勘違いしたばかりに大切な腕を食べてしまい、誠に申し訳ございません。」
イチロー「多少の行き違いはありましたが、大切な娘さんを奴隷にしていることは事実です。プリムラさんが怒るのは仕方がない事だと思います。」
プリムラ「やっぱりこの人優しい‥。あの、私の事はプリムラとお呼び下さい。」
イチロー「腕の事は気にしないで下さい。事故みたいなものですから‥。それより今後とことですが‥。」
プリムラ「はい、私があなたの生涯奴隷になります。腕を頂いていますので、すでに眷属になっております。親子共々宜しくお願いします。ちなみに子供を産んでおりますが処女受胎ですので‥。」
この人、何を言ってくるの?
イチロー「貴女、普通のドラゴンじゃないですよね?」
プリムラ「貴女なんて他人行儀な‥。プリムラと呼んで下さい。」
駄目だ、話を聞いてくれない。
イチロー「メア、お母さんは普通のドラゴンじゃないよね?」
メア「はい、神竜ですよ。私もですが、私はまだ子供ですので、お母さんとは天と地の差があります。」
メアと話しているうちにプリムラさんから尻尾があらわれ、身体に巻きついてくる。
何だろう、凄く嫌な予感が‥。
八岐大蛇「この女発情してますね。もう許しません!」
八岐大蛇がプリムラに襲いかかる。
いや、それだと俺も巻き込まれるから‥。
ぐっ、首が絞まるから‥。
咄嗟に緋莉が助けに入るのが目に見えたが、イチローは意識を失うのであった。
またかよ!!
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